【ドル円今週の予想(4月5日)】
*予想レンジ:108.50~111.50円。
*今週のドル円は押し目買い基調が続きそうだ。新型コロナ対策の経済支援策に続く巨額なインフラ投資に加え、ワクチン接種の普及に伴う雇用情勢の大幅な改善を背景に景気回復期待が続き、株高、金利高、ドル高が続くだろう。
バイデン大統領は新型コロナウイルス危機を受けた約1兆9000億ドルの追加経済対策に続く大型財政政策として、31日にインフラや気候変動対策を中心に8年間で2兆ドル(約221兆円)超を投資する成長戦略を正式発表した。国内製造業の競争力を強化し、雇用を創出するとともに、先端技術分野で台頭する中国に対抗する。財源確保へ連邦法人税率を21%から28%に引き上げることも提案した。4月に示す社会福祉拡充策を含めた成長戦略は総額3兆ドルを超える可能性があり、戦時を除く財政支出としては大恐慌を受けた1930年代の経済対策「ニューディール政策」以来の規模になる。巨額の財政出動に対する野党共和党の反対は強いが、市場には期待感が先行している。
3月米雇用統計(季節調整済み)は、景気動向を敏感に反映する非農業部門就業者数が前月比91万6000人増と、前月(46万8000人、改定)から加速し、市場予想の64万7000人を大幅に上回った。これは、2020年8月(158万3000人増)以来7カ月ぶりの大きな伸び。失業率は6.0%と先月の6.2%から0.2ポイント改善した。景気回復が勢いづいており、インフレ加速への懸念が強まりそうだ。就業者数の伸びは新型コロナウイルス危機への経済対策やワクチンの普及が経済活動を押し上げ、好調の目安とされる20万人を3カ月連続で超えた。職探しをする人が増えたため、失業率の低下は小幅にとどまった。ただ、コロナ危機直後の20年3、4月に失業した約2200万人のうち、復職したのは6割強にとどまっている。失業率も危機前(3.5%=20年2月)を大きく上回ったままだ。ただ、約1兆9000億ドル(約210兆円)の追加経済対策が3月に発動されたことで、景気と雇用の回復に弾みがつくとの見方が多い。
コロナワクチン普及による感染拡大防止の規制措置緩和などを受け、コロナ禍以降の正常化が進み、4~6月期、7~9月期も就業者数の増加ペースは加速する見込み。
バイデン大統領も、3月の雇用統計の結果を「景気回復に弾みがついた」と評価した。ただ、新型コロナウイルス危機の打撃を踏まえ「経済を永続的により良く再建する必要がある」と主張。インフラ投資を軸に2兆ドル(約221兆円)超を充てる成長戦略の実現に改めて強い意欲を示した。
先週発表された他の米経済指標は良好だった。30日に発表された米民間有力調査機関コンファレンス・ボードによる3月消費者景気信頼感指数は109.7と、1年ぶりの高水準となった。1月のS&Pコアロジック・ケース・シラー住宅価格指数(全米主要20都市)は前年比11.1%上昇し、2006年以来の大幅な伸びとなった。31日に発表された3月ADP全米雇用報告は民間就業者数の伸びが前月比51万7000人増となり半年ぶりの大きさとなった。2月分は17万6000増と従来の11万7000人増から上向き改定された。シカゴ景況指数は2年8カ月ぶりの水準に上昇した。1日に発表された3月米ISM製造業景況指数は64.7と約37年ぶりの水準に大幅上昇。3月の米企業人員削減数が3万0603人と、前月から11%減少し、2018年7月以降で最小となった。
好調な経済指標を受けて、米連邦準備制度理事会(FRB)が予想よりも早期に利上げに動く可能性があるとの観測が高まり、長期金利の指標である10年物米国債利回り(は1.7%台に上昇している。それを受けてドルも押し目買いが続いている。この流れは今後も継続しよう。また、新年度入りした本邦機関投資家による新規外債投資への期待感も円売りを強めよう。
今週は、7日に3月米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨が公表される。パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長は、最近の金利上昇を容認する姿勢を示した。議事要旨では、年内のテーパリング(資産購入の段階的縮小)についてどのような見解が示されるかがポイントになろう。テーパリングに言及があった場合、ドル買いに拍車がかかる可能性がある。
一方、ドル円の上値を抑える要因としては、3月末に終了した補完的レバレッジ比率(SLR)条件緩和。米金融機関の収益悪化懸念や2000億ドル規模の米国債売却が警戒されている。米投資会社アルケゴス・キャピタル関連の株売り懸念に注意したい。
*CFTC建玉:3月30日時点のファンドのドル売り・円買いポジションは、5万9481枚(前週比+5956枚)。円買いポジションは6万枚に近づいた。ファンドは、3月中旬には円買いから円売りに転じており、円売りポジション(未決済の円売り約定)はさらに拡大する可能性もある。
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