【ドル円相場、今週の予想】
*今週のドル円は堅調に推移しそうだ。米連邦準備制度理事会(FRB)は、10月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利を0.25%引き下げたが、先週の議会証言でもパウエルFRBB議長は、政策金利を当面据え置く考えを改めて示唆した。先週発表された経済指標は、強弱まちまちだったが、インフレ率の上昇が見られることや個人消費が堅調なことから、利下げ打ち止めを妨げる状況にはならないだろう。
10月米消費者物価指数(CPI)が季節調整後で前月から0.4%上昇した。変動の大きいエネルギーと食料品を除いたコア指数は0.2%の上昇だった。10月米鉱工業生産指数は前月比0.8%の低下と市場予想の0.4%低下を大幅に下回った。マイナス幅は昨年5月(0.8%)以来1年5カ月ぶりの大きさとなった。前月比マイナスは2カ月連続。前年同月比でも1.1%の大幅低下となった。10月米小売売上高は前月比0.3%増加。プラスは2カ月ぶり。11月NY製造業景況指数は2.9と10月の4.0から悪化した。市場予想の5.0も下回った。一方、6カ月先の見通しは、19.4と前月(17.1)から改善した。
20日に公表されるFOMC議事要旨(10月29-30日開催分)が注目されよう。10月のFOMC後の声明では、景気拡大に向け「適切に行動する」との従来の文言は削除された。追加緩和に否定的な意見が多く出ていた場合、ドル買い・円売りが強まるだろう。
市場の一番の注目は米中通商協議の部分的合意だろう。米中両国は第1段階の合意に向けて最終的な調整を進めていると見られ、先週末の報道によると、米中両国は16日に閣僚級電話会談を行い、第1段階の合意に向け双方の中核的な懸案事項について「建設的な議論」を行ったという。中国商務省が明らかにした。電話会談は米国側の要請により行われ、中国側から劉鶴副首相、米国側からはライトハイザー米通商代表部(USTR)代表とムニューシン財務長官が参加した。クドロー米大統領国家経済会議(NEC)委員長は、米中貿易協議の第1段階の合意に関して「取りまとめに近づいている」と発言し、合意に「近づいている」が、「まだ終了していない」と語った。協議の最終段階には最も難しく複雑な問題が残っており、再び交渉が決裂する可能性もある。
しかし、トランプ大統領はウクライナ疑惑で来年の大統領選で形勢が不利になっているため、通商分野で成果をあげ支持者へのアピールにしたいとの思惑があること、中国側も混乱する香港問題を背景に国内情勢を落ち着かせる必要があることから双方が「部分合意」を望んでいるといえる。トランプ政権はクリスマス商戦を控えて市場のセンチメントをより高め、一段の株価上昇につなげたいだろう。CFTC建玉を見ると、ファンドのドル買いがじりじりと拡大している。米中協議の進展が早まれば、心理的にもテクニカル的にも節目となる110円をトライする可能性が高まるだろう。
<今週の主な経済指標>
18日は米NAHB住宅市場指数、19日は米住宅着工件数、米住宅建設許可件数、20日は本邦貿易収支、米MBA住宅ローン申請指数、米FOMC議事要旨、21日は本邦工作機械受注、米景気先行指数、米中古住宅販売件数、OECD経済見通し、22日は日米独ユーロ各種PMI、ラガルドECB総裁講演、独GDP改定値など
*CFTC建玉11月5日時点:ファンドのドル買い・円売りは3万4997枚(前週比+8392枚)と増加。総取組高は18万3480枚と前週比6374枚の増加。
*予想レンジ:107.00円~110.00円
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