【トルコリラ円、先週の動き・今週の予想】
*先週のトルコリラ円は軟調だった。シリアのクルド人勢力は10月27日、シリア北部の国境地帯全域から撤退すると正式に表明し、米軍撤収とトルコの侵攻で緊迫したシリア北部情勢は一定程度の収束に向かう可能性が高まった。地政学リスクの後退がトルコリラをサポートしたが、利益確定売りが上値を抑えたようだ。トルコとロシアがシリア北部の少数民族クルド人勢力に対し、トルコとの国境から撤収を求めた合意は29日午後6時に期限を迎え、戦闘などは起きなかった。
トルコは拘束している欧州出身の過激派組織「イスラム国」(IS)戦闘員らを出身国に送還する。送還は11日にも始まる見通し。欧州の多くの国は自国出身のIS戦闘員らの国籍を剥奪しており、実際に送還できるかは不透明。トルコによると、拘束している外国出身のIS戦闘員らは約1200人に上り、オランダや英国出身者などを含む。欧州各国は治安の悪化を懸念し、自国出身の戦闘員らを引きとって裁判にかけることに消極的で、トルコはかねて「我々はISのホテルではない」などと欧州を批判していた。
*今週のトルコリラ円は、保ち合いとなりそうだ。シリア北部を巡る地政学リスクは後退している。トルコ大統領府は8日、シリア情勢を巡りトルコと英国、フランス、ドイツの4カ国首脳が12月初めにロンドンで会談すると明らかにした。12月3、4日にロンドンで開かれる北大西洋条約機構(NATO)首脳会議に合わせ、会談するという。
トルコ中央銀行のウイサル総裁は、過去数カ月間で10%ポイントに及ぶ利下げを実施しており、利下げ余地は狭まったという認識を示した。また、年末時点の物価目標は中間値で12%とし、従来の13.9%から引き下げた。トルコ中銀は10月24日、政策金利の1週間物レポレートを2.50%ポイント引き下げ、14.0%にすることを決定した。ウイサル総裁が就任した7月時点で1週間物レポレートは24.0%だった。9月消費者物価指数(CPI)は前年比の伸びが9.26%まで鈍化。7月時点では16.65%だった。通貨危機に見舞われた昨年は25%超まで高進していた。ウイサル総裁は四半期インフレ報告で、主要な物価動向は著しく改善しており、世界的な拡張的金融政策も後押ししていると述べた。同時に経済活動は緩やかな回復が続く一方、投資は依然脆弱で、世界経済のさえない見通しが外需を抑制しているとした。
物価に関しては、10月が1桁の伸びとなり、その後11ー12月にかけて上昇する見込みとした。中銀が予想する2020年末の物価水準は8.2%と従来から変わらず。21年末は5.4%、中期水準は5%。インフレ率の低下見通しから、年内のこれ以上の利下げは、行われないとの見方が出てきた。トルコのアルバイラク財務相は7日、今年の同国経済がプラス成長になるとの見通しを示した。現時点の指標によると、11月と12月の経済活動はさらに拡大する見通しという。同相は、低所得層が期間20年の「最低金利」で住宅を購入できる新たな住宅ローン制度について、財務面の下準備が整ったとも発言した。15日発表の小売販売は改善が予想されている。
【トルコ経済指標】
12日火曜日
16:00 9月経常収支前回+26.0億USD、予想+20.5億USD
13日水曜日
時間未定:エルドアン・トランプ会談
14日木曜日
16:00 9月鉱工業生産前年比前回-3.6%、予想+3.5%
15日金曜日
16:00 8月失業率前回13.9%
16:00 小売販売前年比前回-4.3%、予想-2%
*予想レンジ:18.50円~19.50円
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