【白金と金の逆ザヤはさらに拡大へ】

NY市場と東京市場で共に白金と金のスプレッド(終値ベースでの白金と金の価格差)が、今月19日にマイナスに転じてから、日々拡大している。

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白金と金の需給規模を比較すると、白金が200トン程度なのに対し、金は4500トンもあり、およそ23倍もの違いがある。ファンダメンタルズから言えば、金よりも白金の方が希少性が高いため、白金価格が金価格を上回っているのが常態と言える。

昨年のスプレッドを振り返ると、5月末頃までは100~200ドルで推移していたが、9月以降は、欧州の景気低迷と中国の景気減速を背景に原油相場の下落とほぼ連動するように白金相場が下落し、12月にスプレッドはほぼゼロとなった。

白金需要の最大分野を占めるのは自動車触媒需要だが、その40%強が欧州向け需要であるため、白金価格は同地域の景気動向を敏感に反映する。また、中国の景気減速も宝飾需要や自動車触媒需要が低迷することになる。

逆ザヤ状態は今回が初めてではない。2011年8月下旬以降、白金が金を下回る逆ザヤとなり、この価格逆転状態は2013年前半まで続いた。2012年8月には一時-223ドルまで拡大した。これは、世界的な景気後退により白金の産業用需要が減少したのに対し、2010年に端を発した欧州債務危機等の影響や米国の金融緩和(QE)によってドルが下落したため、金が買われた事が主な要因だった。

現在は、欧州の経済状態が悪化している点は類似している。22日、欧州中央銀行(ECB)は、量的緩和(QE)実施を決定した。量的緩和に関しては、国債購入に加え、民間資産の買い入れと銀行への数千億ユーロの低利融資が含まれる。買い入れ額は月額600億ユーロ。3月から開始し2016年9月末まで継続する。総額1兆1400億ユーロの資金が供給される見通し。政策金利は0.05%に据え置いた。この決定を受けてユーロは各主要通貨に対して大幅に下落した。今回の措置は欧州経済の景気成長を促す事を意図しているが、軌道に乗るには時間がかかるだろう。そのため、白金相場にとってサポート要因になるが、需要の大幅な拡大が見込みにくいため、上昇は緩やかになるだろう。

一方、金は、ユーロ安がもたらすインフレ懸念に対して買われ、白金と金の逆ザヤ幅が拡大することになった。通常、ドル高・ユーロ安は、ドル建て金が相対的に割高になるため、金にとっては弱材料になるが、最近はドル高にもかかわらずリスクヘッジとして買われている。特に、NY株価が下落する局面ではその傾向がある。

また、金には需要面でも押し上げ要因がある。国際通貨基金(IMF)が27日に公表した統計によると、昨年12月のロシアの金準備は前月比20.73トン増加の1208.23トンとなり、9ヶ月連続で増加。カザフスタンは同4.16トン増加の191.8トンとなり、13ヶ月連続で増加した。また、オランダは同9.61トン増加の622.08トンとなり、2008年以来16年ぶりに金準備を積み増した。短期的には、中国の旧正月(2月19日)やバレンタインデー(2月14日)に向けての金需要が増加している。

白金と金の逆ザヤ状態は継続し、逆ザヤ幅も拡大していくだろう。
過去のサヤのチャートを見ると、NY市場では200ドル程度の逆ザヤになることも想定される。

*NY市場の白金と金およびサヤ(週足)
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