【ドル円、今週の見通し】
今週のドル円相場は、底堅く推移しながらも2日に発表される8月の米雇用統計を睨んで、次第に保ち合いとなるだろう。

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26日、イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長は、ジャクソンホールの会合で、「FRBの政策目標が達成されつつあり、利上げを行う論拠が高まった」と発言した。8月中旬以降、複数のFRB高官が「9月の利上げも含め近い将来の利上げが可能」と述べて来たが、FRB議長が自ら利上げの必要性を示したため、為替市場では、ドル買い・円売りが加速した。イエレンFRB議長は、雇用の改善が進み完全雇用が達成されつつあること、物価は数年のうちに目標の2%に到達するとの見方を示した。これを踏まえて、数ヵ月のうちに利上げを進める可能性があると、市場に利上げへの注意を喚起した。

しかし、一方で、利上げ時期への具体的な言及はなく、今後の「データ次第」としている。為替市場では当初、ドルが急騰・急落したのも、イエレンFRB議長が、早期利上げに意欲を示したものの、具体的な時期には言及せず、慎重に判断する姿勢も示し、全体を通してタカ派というわけではないと見られたからだろう。ドル買いが加速したのは、フィッシャーFRB副議長が、データ次第としつつも9月利上げの可能性を否定しなかったことや、アトランタ連銀のロックハート総裁も年内2回の利上げ可能性を排除しない考えを示したからだ。米国や世界経済の現状を考えると、追加利上げが可能かどうか、市場は依然として懐疑的になっているようだ。

26日時点のCMEのFED WATCHを見ると、9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げとなる確率は、25日の18%から33%に上昇している。しかし、年内の利上げ時期でもっとも確率が高いのは依然として12月となっている。週明け29日には、9月の利上げ確率は21%に低下している。

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これは、29日に発表された7月の米個人消費支出(PCE)が4カ月連続のプラスとなったものの、FRBが重視するインフレ指標のコアPCEデフレーターが横ばいにとどまり、9月利上げの見方を強める材料にはならなかったからだ。

やはり、市場が利上げへの確信を強めるのは、9月2日に発表される8月の米雇用統計を見てからとなるだろう。29日時点の予想は非農業部門就業者数が+18万人(前回は+25.5万人)、失業率は4.8%(前回は4.9%)、平均時給は+0.2%(前回は+0.3%)。

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なお、イエレンFRB議長は講演で、将来の景気後退時に、景気を下支えする利下げの余地が過去に比べ限られるとも述べ、過去の金融引き締め時ほど利上げを繰り返すことができないとの見方も示した。利下げ以外の緩和策として、金融危機時に実施した資産買い入れやインフレ目標引き上げにも触れるなど新たな方策を検討する考えも表明していることも、市場の利上げ見通しを弱めたようだ。

今週注目される経済指標は、29日の米7月個人所得、米7月個人消費支出(PCE)、コアPCEデフレーター、30日の米8月消費者信頼感指数、31日の米8月ADP雇用統計、1日の本邦4-6月期法人企業統計、中国の8月製造業PMI、米8月ISM製造業景気指数、米8月自動車販売台数、2日の米8月雇用統計、米7月貿易収支など。

予想レンジ:100.00円~103.00円

*CFTC建玉8月23日時点:ファンドの円買いは6万0316枚(前週比+4310枚)と買い越し幅は増加。総取組高は16万4756枚と前週比1149枚の減少。CFTC建玉明細を見ると、ファンドのポジションはドル売り・円買いに傾いているため、先週末のFRB高官の発言を受けて、今週は断続的にポジションの巻き戻しが入ってきそうだ。経済指標が良好であれば、ポジション整理から突発的な円安場面があるかもしれない。

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