【トルコリラ円、先週の動き・今週の予想】
*先週のトルコリラ円は、円安にもかかわらず下落した。トルコ中央銀行は24日に開いた金融政策委員会で、主要な政策金利である1週間物レポ金利を0.5%引き上げた。これは2年10ヶ月ぶりの利上げとなった。また、予想は0.25%利上げだったので、それを上回る利上げとなった。また、翌日物貸出金利も0.25%引き上げた。
トルコ中銀は声明の中で、通貨安がインフレ率見通しの上昇リスクを招いているとことを懸念し、今回の利上げ措置は、トルコリラの下落を食い止めることが狙いと説明した。声明発表直後には、トルコリラの対米ドル相場は急上昇したが、すぐに売りが膨らみトルコリラは対米ドルで過去最安値を更新した。翌25日以降も、トルコリラが反発することはなかった。
*トルコ中央銀行は、主要政策金利の1週間物レポ金利を挟み、翌日物貸出金利(上限金利に相当)、翌日物借入金利(下限金利に相当)という「3つの政策金利」によるコリドー(金利レンジ)を形成して、市場金利を誘導するやや複雑な金融政策を採用している。将来的には、 「金融政策の簡素化」を進め、金利の一本化を目指していると見られている。
*今週のトルコリラ円は、下落基調が続くだろう。トルコの経済状況は厳しくなっている。8日のアメリカの大統領選で共和党候補のドナルド・トランプ氏が勝利して以降、財政拡大や減税によるインフレ率上昇への期待感を背景に、米金利が上昇し、ドルの上昇が加速した。新興国通貨が幅広く売られているが、メキシコペソと並んでトルコリラの下げが目立っている。
先週、トルコ中央銀行が約3年ぶりに利上げしたのは、トルコリラ安を抑えるためだったが、当局の思惑通りに、トルコリラは反転していない。経済成長率が今年と来年の政府見通し、それぞれ3.2%、4.4%に達するのは現時点でほぼ不可能と政府高官は伝えている。先週、トルコ中央銀行が利上げを決定してから間もなく、欧州連合(EU)議会が、トルコのEU加盟交渉の凍結を求める決議を採択した。
トルコでは、7月15日のクーデター未遂事件後に「粛清」が強まり、軍関係者、警察、公務員、教員など10万人以上の身柄が拘束されたり解任されたりし、多数のメディアを閉鎖され、言論の自由が奪われたという。これに歩調を併せて、エルドアン大統領の強権化EU各国は、トルコ政府の対応が「非人道的だ」と繰り返し批判している。これに対し、権力基盤を強めたエルドアン大統領は演説で、EU議会の決議を批判し、EUがさらにトルコと敵対するならば、EUを目指す難民や移民に国境を開くと警告した。
ユルドゥルム首相は25日、来年1月20日にトランプ氏が米大統領に就任するまで市場は不安定で、トルコリラが大きな影響を受けるとの見方を示した。首相は、トルコ中銀の利上げに続いて、トルコ政府がトルコリラ安を阻止する対策を講じると述べた。トルコは政治的にも経済的にも厳しい環境に置かれつつあるようだ。
予想レンジ:30.00円~34.00円
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