【ドル円相場、今週の見通し】
*今週のドル円相場は、下落基調が強まりそうだ。市場が注目していたトランプ大統領の就任演説は、米国第一主義を宣言し、「米国の繁栄を取り戻す」という保護主義を強調する内容となった。

週明けの東京市場では、トランプ政権の保護貿易主義による貿易不均衡是正への警戒感からドル売りが強まり、114円を割り込み、113円台半ばまで円高が進んだ。米大統領選後初めて行われた11日の記者会見で、トランプ氏は米国向けの完成品などを輸入する企業には、多額の税金を課すという「国境税」に言及し、米国の産業を守る「保護主義政策」を披露した。

17日、トランプ次期米政権で上級顧問となるアンソニー・スカラムッチ氏は、ドル高進行のリスクについて警告し、トランプ次期米大統領が公約した米経済活性化の実現がより困難になるとの見解を示した。同氏は、ヘッジファンド、スカイブリッジ・キャピタルの創業者で、スイスのダボスで始まった世界経済フォーラム(WEF)年次総会(ダボス会議)のパネルディスカッションで「通貨の上昇に慎重になる必要がある」と指摘し、「米国内にも影響が広がる」と述べた。また討論会に参加したカーライル・グループのデービッド・ルーベンシュタイン氏は、新興国の企業債務のうち4兆5000億ドルがドル建てだと推計されるが、ドルが大幅に上昇しているため、1994年から95年に起きた「メキシコ通貨危機」のようなリスクがあるとの懸念を表明した。そして、「このトレンドが続けば、ある時点でドル高を抑えるために介入する必要が出てくるだろう」と述べ、ドルの上昇が今年の経済見通しの「最大の課題」になるとの見方を示した。

18日の講演ではイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長も「ドル高が輸出を抑制する可能性がある」との見解を示した。ニューヨーク連銀のダドリー総裁は17日の講演で、米国のインフレと経済成長が穏やかなトレンドとなっていることから、金融当局が物価上昇圧力の抑制を目的とした積極的な利上げで景気拡大を脅かす可能性は低いとの認識を示し、利上げペースの加速について否定的な見方を示した。

一方、19日、トランプ次期米政権の財務長官に指名されたスティーブン・ムニューチン氏は、米国は強いドルの確保に向け通商政策を強化するとの考えを示した。同氏は承認公聴会で「強いドルを維持し、米雇用を創出・保護するような通商政策を実施する」と語った。ドル相場の動向については、強弱の見通しがあるが、ドル円が115円台を回復できない以上、ドル安が続くと見ていいだろう。

今後は、米大統領の一般教書演説に向けて、新政権の閣僚の公聴会で、どのような証言が出てくるか市場は警戒感を強めるだろう。また、今週は英国最高裁による英国の欧州連合(EU)離脱をめぐる議会承認の判断、イタリア憲法裁判所でのイタリア選挙制度改革法案をめぐる審議結果の公表もあり、リスク回避姿勢が強まる可能性があり、円買いが優勢となりそうだ。

今週注目される経済指標は、24日の米12月中古住宅販売件数、25日の本邦12月貿易統計、26日の米12月新築住宅販売件数、米12月景気先行総合指数、27日の本邦12月消費者物価指数、米10-12月期国内総生産(GDP)など。また、27日より中国が春節休み入りとなる。

*CFTC建玉1月10日時点:ファンドの円買いは7万9839枚(前週比+6925枚)と買い越し幅は減少。総取組高は20万9488枚と前週比1万0632枚の減少。トランプ氏始めての記者会見や20日の大統領就任式を控えて利益確定売りが出て、買いポジションが減少したようだ。

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*米商品先物取引委員会(CFTC)データより弊社作成


*テクニカル:ドル円は、 100日移動平均線(青)と200日移動平均線(緑)がゴールデンクロスしており、長期上昇トレンドを形成しているが、短期的に25日移動平均線(赤)を下回っていることから、調整安局面に入っているようだ。相対力指数(RSI)が75%を超えた期間が長らく続いたため、買われ過ぎの調整というところだろう。RSIは下落の途上にあり、まだ40%台なので下値余地は残っている。30%を割り込めば、押し目完了が近いと予想される。

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予想レンジ:112.00円~115.00円



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