【 東京金はレンジ相場が継続 】
*1日発表の6月個人消費支出(PCE)物価指数は前年同月比1.4%上昇と、伸びが4カ月連続で鈍化した。7月の米ISM製造業景況指数も56.3と前月の57.8から低下し市場予想の56.5も下回った。6月の米建設支出も前月比1.3%減と、市場予想の0.4%増に反してマイナスとなった。冴えない米経済指標を受けて、追加利上げペースが鈍化するとの観測が強まり、1280ドル台まで上昇した。

しかし、2日に発表された米民間雇用サービス会社オートマティック・データ・プロセッシング(ADP)が発表した7月の全米雇用報告では、非農業部門の民間就業者数は前月比17万8000人増と、まずまず堅調な内容と受け止められ、安全資産とされる金が売られ、一時1270ドルを割り込んだ。

週末4日に発表された7月の米雇用統計では、非農業部門就業者数が前月比20万9000人増加し、好調の目安とされる20万人増を2カ月連続で上回った。また、失業率は4.3%と前月の4.4%より低下し、インフレ指標の一つである平均賃金も+0.3%とまずまずの伸びとなった。好調な労働市場を受けて米連邦準備制度理事会(FRB)が想定する「年内あと1回」の利上げや、9月と見込まれる資産縮小開始の判断を後押しするとの見方が広がり、金は売られた。

NY金は上値が重くなってきたが、インフレ率に関しては、FRBが目安とする年2.0%には届いていないため、追加利上げを積極的に推し進める状況ではない。ただ、NYダウが2万2000ドルの大台で堅調に推移しているため、金の上値は抑えられているようだ。

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ファンドの買い玉も12万枚まで膨らんだが、現在、強材料に乏しいことから、買い玉整理が先行する可能性が高く、NY金はじり安となる可能性がありそうだ。

*CFTC建玉8月1日時点:ファンドの金買い越しは12万9672枚(前週比+3万8841枚)と増加。総取組高は44万8709枚と前週比1万5118枚の減少。

*金ETF「SPDRゴールド・トラスト」の金保有高は、年初来最小量を更新し、786.87トン(8月7日)となった。年初来最大量は867.00トン(6月8日)。7月に入りNYダウが上昇基調を強めると、それに並行して金ETFの減少傾向が強まった。

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米連邦準備制度理事会(FRB)の追加利上げ時期は12月にずれ込みそうだが、バランスシートの縮小開始が9月と予想されており、金利を生じない金は売られている。

調査会社トムソン・ロイターが実施した調査によると、S&P500種指数構成企業の4~6月期決算の利益は前年同期比12.0%増となる見通し。7~9月期も9.3%増と予想されており、堅調な企業業績が株価の支援材料となって、NYダウは史上最高値を更新しているため、金市場から投資資金が流出しているようだ。

*東京金は、NY金が反落したものの、為替もさほど円安が進行しなかったため、4500円の上値抵抗線で跳ね返されて反落した。

先週のNY金は、コアPCEデフレーターの鈍化が強材料となり、12月限(アクティブマンス)は一時1280ドル台まで反発したが、ADP雇用統計や7月の雇用統計が良好だったことから、結局、週足では反落して引けている。

NY金は1200~1300ドルのレンジの中頃で推移しているが、ドル円は110~115円のレンジの下限に接近している。米連邦準備制度理事会(FRB)の追加利上げ見通しはやや後退している。

CMEのFED WATCHを見ると、7日時点の9月の利上げ確率はわずか1.4%に過ぎず、12月は42.5%と50%に達していない。利上げが滞れば、金にはサポート要因となるが、株式市場にもポジティブ要因となり、株価が上昇するため、結局、金には押し下げ要因となってしまう。

産金業界団体ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)は、2017年上半期の世界の金需要は14%減と発表した。金ETFによる購入が急減したことが背景という。

東京金はレンジの上限(高値から0.38倍押し以上)で推移しているが、なかなか4500円台を回復することができない。市場がリスクオンモードとなっているため、金相場の軟調地合いはまだまだ続きそうだ。

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*今週の予想レンジ:4430~4500円


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