【 東京金は4500円台を回復したものの、伸び悩む】
*先週のNY金は、北朝鮮の核ミサイルに絡む地政学的リスクの高まりから、11日には1298ドル台まで上昇し、1300ドルに迫った。これに加え、米国の低インフレ懸念による利上げ見通しの後退も金の押し上げ要因になった。

8日、ワシントン・ポスト(電子版)が、北朝鮮が核弾頭をミサイル搭載が可能な水準まで小型化することに成功したと報道した。トランプ大統領は、核ミサイル開発を進める北朝鮮に対し、米国を脅すなら「火力と怒りに直面する」と警告したが、北朝鮮はこれに対し、米領グアム島周辺へのミサイル攻撃を検討していると表明した。恐怖指数(VIX)が44%も急騰し、市場のリスクオフモードが高まった。NYダウが2万2000ドルを割り込むと、「質への逃避」から金が買われた。

11日には、トランプ大統領が、ツイッターに「北朝鮮が無分別に行動した場合の軍事的解決の準備は万全で、臨戦態勢にある」と投稿すると、金は一段高となり、1300ドルに迫った。

また、7月の生産者物価指数(PPI)と消費者物価指数(CPI)がいずれも予想や前回を下回ったため、「年内あと1回」の利上げに懸念が強まり、為替市場ではドルが下落し、ドル建て金には割安感が強まった。

15日の祖国解放記念日(北朝鮮)に、グアムへのミサイル発射が懸念されたが、金正恩委員長が、「アメリカの行動をしばらく見守る」と発言し、ミサイル発射は中止された。これを受けてNY金時間外は1280ドル台に急落した。

NY金は、レンジの上限1300ドルに迫ったが、上値抵抗線で跳ね返された格好になった。これをブレイクしないと本格的な上昇相場には発展しないだろう。

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*CFTC建玉8月8日時点:ファンドの金買い越しは14万8837枚(前週比+1万9165枚)と増加。総取組高は44万8727枚と前週比18枚の増加。

*金ETF「SPDRゴールド・トラスト」の金保有高は、8月7日に年初来最小量786.87トンとなり、この水準が続いている。年初来最大量は867.00トン(6月8日)。7月に入りNYダウが上昇基調を強めると、それに並行して金ETFの減少傾向が強まった。米連邦準備制度理事会(FRB)の追加利上げ時期は12月にずれ込みそうだが、バランスシートの縮小開始が9月と予想されており、金利を生じない金は売られた。NYダウが史上最高値を更新し、金市場から投資資金が流出したようだ。先週は、北朝鮮のミサイル問題で地政学的リスクが高まったものの、金ETFが増えることはなかった。投資人気が低迷しているようだ。
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*NY金が1300ドルに接近したものの、ドル円相場が110円を下回る円高となったため、東京金は4500円台に乗せたものの伸び悩んだ。金投資人気は離散していると言えるだろう。

先週の北朝鮮のミサイルに絡む地政学的リスクを受けても、NY金の上昇幅は限定的で、何よりも金ETFの減少が金投資への不人気を表している。15日には、金正恩委員長が、グアムへのミサイル発射作戦を実行する部隊を視察し、「アメリカの行動をしばらく見守る」と発言した。挑発一辺倒だった従来の姿勢から一転して、アメリカの出方をうかがう発言をしたため、目先のリスクは回避されたようだ。

ただ、これで、米朝が和解し、金が大幅下落という展開は考えにくい。21日には、北朝鮮が反発している米韓合同軍事演習が開始されるが、危機は再び高まりそうだ。25日は先軍の日(金正日が先軍指導を開始した日)、9月9日は北朝鮮の建国記念日であり、要注意日になろう。

米軍の偵察衛星によると、北朝鮮は中距離弾道ミサイルの発射に向けた移動発射台を準備しており、攻撃実行を決めてから24~48時間でミサイルを発射できるよう準備を進めている可能性があるという。

金融面では、今月24-26日にジャクソンホールでシンポジウムが開催され、ドラギECB総裁が出席する予定だが、そこで、テーパリングへの言及があれば、ユーロドル相場が大きく動く可能性があろう。ユーロが対ドルで上昇すれば、ドル建て金は割安感から押し上げられるだろう。

東京金は緩慢ながら下値を切上げており、年初高値4553円を目指す展開が続くと予想する。

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*今週の予想レンジ:4450~4550円


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