【 東京金は4500円台を回復したものの、伸び悩んでいる】
*先週のNY金は、週前半は北朝鮮関連の地政学的リスクの後退を受けて反落したが、週後半は米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨やトランプ政権の混迷を受けて、一時1300ドルを超える場面があった。ただ、上昇場面では利益確定売りが優勢となり、大台維持はできず反落して週を終えた。

ティラーソン米国務長官とマティス国防長官は14日付のウォール・ストリート・ジャーナル紙に寄稿し、北朝鮮に関して、経済制裁や外交による「平和的な圧力」を行使し、米軍による侵攻は目指していないと改めて説明した。これに対し、金正恩朝鮮労働党委員長も「米国の行動をもう少し見守る」と静観の姿勢を示唆した。このため、米朝の軍事衝突懸念が後退し、NY金は1272ドル台に反落した。

16日に公表されたFOMC声明では、弱いインフレ動向を警戒し、追加利上げのタイミングは物価動向を見極めるまで「忍耐強く」待つべきとあり、年内あと1回の利上げに対して懐疑的な見方が強まった。ハト派的な声明を受けてドルが売られ、ドル建て金は反発に転じた。

17日は、トランプ大統領が、民間企業・団体のトップで構成する二つの諮問会議を解散すると表明し、トランプ政権が掲げる経済政策の実現性に懐疑的な見方が広がり、NY金は昨年11月9日以来、1300ドルをブレイクした。スペインでは、車両が群衆に突っ込み、死傷者を出したテロ事件が発生したことも、安全資産である金を押し上げた。

18日に、保守強硬派のバノン首席戦略官・上級顧問が離職するとの報が伝わると、NYダウの下げ幅が縮小し、金は売りが優勢となった。

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*CFTC建玉8月15日時点:ファンドの金買い越しは18万7734枚(前週比+3万8897枚)と増加。総取組高は47万7921枚と前週比2万9194枚の増加。

*金ETF「SPDRゴールド・トラスト」の金保有高は、8月7日に年初来最小量786.87トンとなったが、14日から増加に転じ、22日時点では799.29トンとなり800トンに近づいた。年初来最大量は867.00トン(6月8日)。7月に入りNYダウが上昇基調を強めると、それに並行して金ETFの減少傾向が強まった。北朝鮮のミサイル問題で地政学的リスクが高まったにもかかわらず、減少が続いたが、米朝衝突の懸念が後退すると、増加に転じた。


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*21日から31日まで朝鮮半島で米韓合同軍事演習「乙支(ウルチ)フリーダムガーディアン」が予定されている。北朝鮮は「火に油を注ぐもので、朝鮮半島情勢を一層悪化させる」と非難した。しかし、双方共に自重しているようで、緊張感は高まっていない。

市場では、地政学的リスク以上にトランプ大統領の求心力の低下が懸念されているだろう。特に、12日にバージニア州で発生した白人至上主義団体と反対派との衝突事件をめぐる発言では、諮問会議メンバーの辞任が相次ぎ、トランプ大統領の発言は「人種差別的」と非難され、米国が内部分裂の様相を呈しているようだ。今後の政策運営が後手に回ることが考えられ、ドルの下値リスクが意識されているため、金も底堅く推移しよう。

今週は24-26日にジャクソンホール講演会が開催される。イエレンFRB議長が9月のFOMCでバランスシート縮小開始を表明するかどうかがポイントになろう。9月開始となれば、米国債への再投資がないため、債券価格下落・長期金利上昇となり、ドルは反発する可能性が高い。その場合、金は下落しよう。

もっとも東京金にとっては、為替が円安になるため、さほどの弱材料にはならないと予想する。年初来高値を更新するのは時間の問題だろう。

今後は、市場最高値圏にあるNYダウの動向が金相場をサポートすると予想する。米株価は、バリュエーションやファンダメンタルズから上げ過ぎており、下落リスクが高まっているとの警告がヘッジファンド運用者や大手金融機関からも出始めている。金ETFが増加しているのもそうした潜在的なリスクを感じているからかもしれない。

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*今週の予想レンジ:4450~4550円


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