【ドル円、今週の見通し】
*今週のドル円は、上値の重い展開になりそうだ。北朝鮮は3日、6回目の核(水爆)実験を実施した。マティス米国防長官は「米国や同盟国が攻撃された場合は、大規模な軍事措置をとる」と警告し、地政学的リスクが高まり、これを受けて、週明け早朝のオセアニア市場で、ドル円は一時109円20銭台まで急落した。東京市場では109円台後半まで戻しているが、上値の重い状況が続いている。

北朝鮮の核実験は、29日の弾道ミサイル発射から短期間で実施されているが、今後も9月9日の「建国記念日」、10月10日の「朝鮮労働党創立記念日」を控えているため、軍事的示威行動に出る可能性があり、地政学的リスクは収まりそうにない。朝鮮半島を巡る緊迫感が高まる可能性から、ドルの上値は抑えられるだろう。

1日に発表された8月の米雇用統計は、非農業部門就業者数、失業率、平均時給のいずれもが予想と前回を下回る低調な数字となった。しかし、8月の雇用統計は夏季という季節要因から、後で上方修正される可能性が高く、米連邦準備制度理事会(FRB)が9月にバランスシートの正常化を開始することを妨げるほど悪くはないとの見方からドルが買い戻されたが、PCEコアデフレーターが低下し、平均時給も伸び悩んでいるため、インフレ率の上昇が見込まれていない。「年内あと1回の利上げ」見通しは後退する可能性が高く、ドル買いにも限界があろう。

また、9月5日から再開される米議会では、トランプ政権と米議会との関係が悪化していることもあって、9月末に向けて債務上限引き上げ法案と歳出予算法案の審議が難航しそうだ。米議会は、政府機関の閉鎖回避のためには、9月末の年度末に向けて、歳出法案と債務上限引き上げ法案を可決しなければならない。トランプ大統領はメキシコ国境の壁建造予算を盛り込まなければ歳出法案に拒否権を行使すると警告している。

<主なイベント・経済指標>
*主なイベントは、4日はレーバーデーで米国市場は休場、5日から米議会再開、9日は北朝鮮の建国記念日。なお、5日の麻生・ペンス米副大統領の会談は中止となった。
*主な経済指標は、日本では6日に7月の毎月勤労統計、7日に7月の景気一致CI指数、景気先行CI指数、8日に4〜6月GDP2次速報、7月の経常収支、8月の景気ウォッチャー調査。海外では5日に米7月耐久財受注、6日に米ISM非製造業景況指数、ベージュブック等。

*CFTC建玉8月29日時点:ファンドのドル買い・円売りは6万8524枚(前週比-5562枚)と減少。総取組高は20万9890枚と前週比5567枚の増加。

<強材料>
①.ムニューシン米財務長官は、ハリケーン「ハービー」で大きな被害を受けたテキサス州の復興で支出が新たに必要になることから、連邦債務上限の引き上げに向け議会に残された時間は短くなる可能性があるとの認識を示した。
②.ハリケーン「ハービー」を受けた復興予算。
③.FRBは金融政策正常化を推進していく可能性。

<弱材料>
①.7月の米個人消費支出(PCE)コアデフレーターは、前年比で1.4%上昇と、FRBが目安としている2.0%上昇には達しなかった。
②.7月の米中古住宅販売成約指数は、予想外に前月比で0.8%低下した。
③.8月の米雇用統計では賃金の伸びが見られず、ディスインフレ懸念が高まった。

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予想レンジ:108.00円~111.00円


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