【 東京金は、レンジ相場が続きそう】
*先週のNY金は、複数の強材料が出現して底堅く推移した。サウジアラビアでは次期国王と目されるムハンマド皇太子が汚職関与を理由に王族メンバーや閣僚らを多数拘束するなど「粛清」に動いているため、サウジ情勢に対する先行き不安が浮上し、地政学的リスクが高まった。

米国では、税制改革の焦点となる法人減税をめぐり、上院の共和党執行部が実施時期を下院案の2018年から19年に遅らせることを検討していると報じられ、税制改革への期待が後退した。上院共和党が9日に発表した税制改革案は、下院案と比べて個人所得税の最高税率や適用税率区分などの点で相違が目立つ内容となったため、法案一本化に向けた調整が難航し、税制改革自体が頓挫することへの懸念が広がった。

また上院案が、トランプ政権が公約の柱とする法人減税の実施時期を下院案より1年遅らせたことも嫌気された。こうした背景から、ドル相場が反落し、ドル建て金に割安感が強まって買いが優勢となった。ただ、米連邦準備制度理事会(FRB)による年内あと1回の利上げが、ほぼ確実視されているため、上値は重かった。

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*CFTC建玉11月7日時点:ファンドの金買い越しは19万57904枚(前週比+2695枚)と増加。総取組高は53万6843枚と前週比4925枚の増加。

*金ETF「SPDRゴールド・トラスト」の金保有高は、8月7日に年初来最小量786.87トンとなったが、8月14日から増加に転じ、11月13日時点では843.39トンとなった。NYダウが史上最高値を更新する中、安全資産である金は買いが細り、850トン台を下回った。年初来最大量の867.00トン(6月8日)を更新するには、時間がかかるかもしれない。ただ、地政学的リスクや政治的不透明感から、安値では買いが入り、減少にも歯止めがかかってきたようだ。季節要因的にも、これからクリスマスに向けて現物需要が増える可能性があり、金ETFは増加していく可能性がある。

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*ドル高基調が弱まったことでドル建て金は底堅くなり、NY金は1260ドル台を下値にして底堅く推移しているが、東京金相場はドル円とNY金の綱引きで決まるため、保ち合い状態が続いており、レンジ相場から抜け出せていない。

市場の焦点は米議会で審議中の税制改革の行方に移っている。トランプ大統領はクリスマスまでに実現させる意向だが、上院と下院では法人減税の導入時期など相違点も多く、一本化への調整は難航が予想されている。これが懸念に反して、すんなり決まるようであれば、「ドル反発・NY金下落」といった展開になろう。

ただ、12月の利上げはほぼ確実視されているものの、次期米連邦準備制度理事会(FRB)議長がハト派と目されているパウエルFRB理事であるため、来年の利上げが従来の想定通りに果たして3回になるのかという疑問があるため、金相場はサポートされるだろう。サウジアアラビアにおける一種の粛清や鳴りを潜めている北朝鮮情勢の行方も気になり、不透明要因がある以上、金が急落といった展開は想定しにくいだろう。一つ気になる点は、連騰していたNYダウのモメンタムにやや陰りが出てきたことだ。今後、税制改革法案の遅れが嫌気されて利益確定売りが強まれば株価は下落し、リスク回避の観点から金相場の反発が予想される。その場合、東京金はレンジをブレイクしそうだ。

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*今週の予想レンジ:4600~4700円


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