【トルコリラ円、先週の動き・今週の予想】
*先週のトルコリラ円は下落した。リラは対ドルで一時3.97リラ台と過去最安値を更新した。米司法当局が対イラン経済制裁に違反したとして起訴したトルコの実業家レイ・ザラプ氏の公判を巡り、トルコのボズダー副首相が、「明確な陰謀」と米を非難したことで、対米関係の一段の悪化懸念が広がった。

米検察はイラン出身でトルコとの二重国籍を持つレザ・ザラブ氏を起訴している。同氏は、イランが核疑惑で経済制裁を科されている時に、米国の制裁を迂回するためトルコから輸出した金でイランに天然ガスや原油輸入の代金を支払う巨額の取引に従事し、トルコ政権中枢への贈賄容疑で捜査を受けたという。ザラブ被告が司法取引に応じ、エルドアン政権の汚職疑惑が再燃するとの観測や、制裁違反に絡み米当局がトルコの主要銀行に巨額の罰金を科すとの一部報道もリラ売りにつながったようだ。

また、エルドアン大統領が、トルコ中銀に対して利下げを行うようにと発言したことも、中銀の独立性を損なうとして嫌気された。エルドアン大統領は17日、トルコ中銀はインフレを加速させる間違った軌道にあると批判。トルコの10月消費者物価指数(CPI)は前年比+11.90%と、9月の+11.20%から加速し、2008年7月以来の大きさとなった。エルドアン大統領は、「高い金利で融資しようとすれば、投資は阻害されてストップする。われわれはかつて利下げをしてインフレ率を一桁に引き下げたことがある」と指摘し、トルコ中銀に利下げするように改めて求めた。

*今週のトルコリラ円は、軟調な展開が続きそうだ。トルコリラの下落に対して、市場からは「経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)だけでは説明できない」との声が挙がっている。過去3ヶ月の間にトルコリラは対ドルで10%を超える下落となっているが、この背景には対米関係の悪化があると見られている。

10月には相互にビザ(査証)発給を停止することになり、対イラン経済制裁に違反したとして米国で起訴されたトルコの実業家レイ・ザラブ氏の初公判が12月4日に迫り、トルコの政界や金融界を巻き込む展開になるとの臆測もリラ売りに拍車を掛けた。

しかし、ビザの発給停止は11月には解除された。先週24日には、トランプ大統領がエルドアン大統領と、シリアなどの中東情勢を巡って電話で協議し、シリアのクルド人武装組織への武器提供を停止すると表明した。両国の関係悪化に歯止めがかかってきたようだ。米国としても、北大西洋条約機構(NATO)を通じた同盟関係にあるため、これ以上の関係悪化は得策でないと考えたようだ。

また、トルコリラが対ドルで節目となる1ドル=4.00リラを越えないように、トルコ中銀も利上げを考えるようになってきたようだ。エルドアン大統領の利下げ発言が市場に動揺を与えたが、トルコ大統領補佐官は、トルコ中銀の独立性は無限であると市場の疑念払拭に努めた。

トルコのインフレ上昇に対してトルコ中銀が適切に対応できるかどうかが問題になっている。ドイツ銀行は、リラ安を食い止めるためには、1.00~1.25%の利上げが必要と提言している。来月14日にはトルコ中銀理事会があるが、果たして利上げするかどうか、トルコ中銀の手腕が問われる。

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*予想レンジ:27.80円~29.80円


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