【東京金は上値追いの可能性】
*先週のNY金は上昇した。21日に終了した米連邦公開市場委員会(FOMC)では、市場の予想通りに政策金利は1.50%から1.75%に引き上げられた。市場が注目していた2018年の利上げペースは、12月時点と同じく年3回(残り2回)となった。声明内容がハト派的と受け止められ、ドルが下落し、ドル建て金は割安感から上昇した。

トランプ大統領は22日、中国の知的財産権侵害に対する貿易制裁の発動を決定し、最大600億ドル規模の中国製品に25%の関税を課す見通しとなった。23日には主に中国を標的とした鉄鋼とアルミニウムの輸入制限措置も発動した。これに対し中国は同日、米国産豚肉などに関税を課す報復措置を発表。米中が「貿易戦争」に突入する可能性が高まったことから、世界的に株価が急落し、安全資産である金が買われた。一時1350ドルを越え、レンジの上限をブレイクする反発を見せた。

利上げペースが加速しそうにないとの見方から米長期金利は上値を切り下げている。また、米中貿易戦争の激化とその影響が懸念され、金の現物需要が少しづつ増加しており、これも金相場には追い風だろう。NY金は従来のレンジの上限と見られていた1350ドルをブレイクする場面もあり、年初来高値の1365.4ドル(1月25日)を更新する可能性が出てきた。

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*NY金予想レンジ=1330~1370ドル

*CFTC建玉3月20日時点:ファンドの金買い越しは14万8731枚(前週比-1万9217枚)と減少。総取組高は54万5499枚と前週比1万8737枚の増加。

*先週の東京金は上昇し、短期的な上値抵抗線である4500円をブレイクした。104円台までの円高が進行したにもかかわらず、NY金が大幅上昇したため、東京金もようやく上昇基調に転じたようだ。FOMCで利上げが決定された後は、「ドル安・金高」が進行していたが、今回もそのパターンが踏襲された。今回はこれと同時に米中貿易戦争という大きな材料が飛び込んできたため、リスクオフモードが増幅された。

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もっとも、米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)が25日、米中両国が通商問題の解決に向けて水面下で交渉を開始したと報道。ムニューシン米財務長官とライトハイザー米通商代表部(USTR)代表が、中国の劉鶴副首相に宛てた書簡で、貿易不均衡是正に向け米政府側の具体的な要求を提示した。ムニューシン財務長官は交渉を推進するために中国訪問も検討しているという。この報道を受けて、先週高まった米中貿易戦争突入への警戒感が和らいだ。

しかし、米国や欧州連合(EU)各国は26日、英国で起きた神経剤による元ロシア情報員暗殺未遂事件への対抗措置として、ロシア外交官を追放する方針を決定した。ロシアが報復措置を取るのは必至で、米欧との対立がさらに深まるのではないかとの懸念が強まり、安全資産としての金が買われた。FOMC前に戻していたドル指数は再び下落に転じ、ドル安トレンドに回帰しており、ドル安が金を押し上げていく展開も続くだろう。東京金は年初高値4754円(1月9日)と年初安値4438円(3月19日)の半値戻しである4600円を超えてくれば、全値戻しが視野に入ってくる。

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*東京金予想レンジ:4520~4620円。


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