【ドル円相場、今週の展望】
*今週のドル円はジリ高となりそうだ。週明け2日の東京市場のドル円は、一時5月22日以来となる111円台前半に上昇した。2日付の中国共産党機関紙・人民日報が中国の鍾山商務相の発言として、同国が市場アクセスを大幅に拡大するとともに、いかなる種類の保護主義にも反対する意向を伝えたことがドル買い・円売りにつながったようだ。市場では中国の市場アクセス拡大で、米中の貿易摩擦が回避されることへの期待感が広がったと見られている。

米国は今週6日、知的財産権侵害への制裁措置として340億ドル相当の中国輸入製品に追加関税を発動する予定。中国は米国の制裁関税への対抗措置として同額の米国輸入製品に報復関税を発動すると表明している。これを受けて世界の株式市場が不安定に推移しているが、中国の市場アクセス拡大を受けて、6日までに落としどころを見つけられる可能性が高まった。ドル円は堅調に推移しそうだ。トランプ大統領の保護主義的な通商政策に対する懸念が一時的に後退する可能性はあるが、中国の景気減速や米国の景気減速の兆しがドルの上値を抑える可能性があるだろう。

米中貿易摩擦の激化が中国経済に大きな悪影響をもたらす可能性が懸念され、人民元相場は月間ベースで記録的な下げとなる見込み。人民元は今月、対ドルで約3.4%下落し、資本流出の引き起こしを招くと懸念されている。これを受けて上海株は下落し、世界の株価にもネガティブ要因になっている。

クドロー米国家経済会議(NEC)委員長は29日、米連邦準備制度理事会(FRB)が「非常にゆっくりと動くことを期待している」と明言した。クドロー委員長は、FRBが、雇用拡大と経済成長の加速はインフレを引き起こさないと理解することを望んでいると主張。FRBが景気過熱を回避する利上げを急がないよう注文した。政権高官が金融政策に言及するのは極めて異例で、利上げ牽制制発言とも受け止められている。背景としては、米国の景気減速懸念があるのではないか。フィラデルフィア地区連銀が発表した6月の連銀業況指数は19.9と、前月の34.4から大幅低下し、2016年11月以来約1年半ぶりの低水準となった。5月米耐久財受注では、民間設備投資の先行指標とされるコア資本財の受注が前月比0.2%減と落ち込んでいる。

週明け2日に発表された6月日銀短期経済観測調査(短観)は、大企業・製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)は2期連続で悪化となった。2期連続の悪化は2012年12月以来、5年半ぶり。米国発の通商問題や資源価格上昇への懸念により景況感が悪化した。6日には6月米雇用統計が発表される。非農業部門就業者数予想は19.5万人(前回22.3万人)、失業率は変わらずの3.8%、平均時給は前回と同じく+0.3%が予想されている。予想通りであればドル買い要因となろう。



*CFTC建玉6月26日時点:ファンドのドル買い・円売りは3万4221枚(前週比-1341枚)と減少した。総取組高は15万3566枚と前週比1075枚の減少。ファンドのドル買いは足踏みしているようだ。


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<主なイベント・経済指標>
2日は6月米ISM製造業景況指数、3日は5月米耐久財受注、4日は独立記念日で休場、5日は6月ADP雇用統計、6月FOMC議事録公表、6日は15:00南アフリカ6月外貨準6月米雇用統計。

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*予想レンジ:109.00円~112.00円


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