【トルコリラ円、先週の動き・今週の予想】
*先週のトルコリラ円は大幅安。トランプ大統領が10日、トルコに対する鉄鋼・アルミニウムの輸入制限措置について追加関税を2倍に引き上げる方針を表明したことをきっかけに急落し、最安値を更新した。

エルドアン大統領は12日の演説で、急落した通貨リラの相場安定のために不可欠とみられる政策金利の引き上げに否定的な考えを示した。トルコ中央銀行は13日、リラ建ての預金準備率をすべての期間に対し250ベーシスポイント(bp)引き下げるとともに、非中核的な外貨建て債務に対する預金準備率を期間3年までを対象に400bp引き下げたと発表。これにより約100億リラ相当の金の流動性が金融システムに供給される。この他、中銀が流動性供給に向け翌日物貸出金利を用い、水準は19.25%と、1週間物レポレートの17.75%よりも1.5%ポイント高くなる見通しであることを明らかにした。利上げではなくコリドー(金利レンジ)を利用した金融引き締めへを計った。

アルバイラク財務相も市場の懸念緩和に向けた行動計画を策定したと発表。これを受け、リラは前日に付けた過去最安値圏から反発した。トルコは15日、米国による鉄鋼輸入制限措置に対する報復措置として、乗用車やアルコール飲料など一部の米国製品に追加関税を課したと発表。またエルドアン同国大統領は米国電化製品の不買運動を呼び掛けた。

一方、米政府はトルコで拘束された米国人牧師を早期に釈放しなければ一段の経済措置も辞さないと警告。両国の関係がさらに冷え込めば、トルコの通貨安が再燃するのではないかとの懸念が強まった。週末も、米国人牧師の拘束を続けるトルコに対し、米政府が追加の制裁措置も辞さない強硬姿勢を見せる中、再び急落した。

*今週のトルコリラ円は、戻り売り基調が続きそうだ。対米関係に改善の兆しが消えず、ダブル格下げもあってトルコリラは戻り売りが続きそうだ。今週は、トルコがほぼ1週間休場(犠牲祭)となるため、突発的な動きが警戒される。

米格付け大手2社が17日、既に投機的水準にあるトルコの信用格付けをそろって1段階引き下げた。通貨リラが急落しており、トルコ経済を押し下げるとの懸念を示した。S&Pグローバル・レーティングは、トルコの格付けを「Bプラス」に引き下げた。通貨の急落が経常赤字の拡大や民間企業の圧迫につながり、経済が悪化すると説明。トルコが来年、マイナス成長に陥ると予想した。ムーディーズ・インベスターズ・サービスも「Ba3」に格下げ。中央銀行の独立性が疑問視されるなど、強権姿勢を強めるエルドアン大統領の下で経済政策の見通しや実効性に不透明感が漂っていると指摘した。

国際金融協会(IMF)は15日、トルコ通貨リラの現時点の相場が適正水準を大幅に下回っているとの認識を示した。また、トルコの景気減速や輸出増加を背景に国際収支見通しが改善し、向こう1~2年間にリラ相場が上昇すると予想した。IMFエコノミストはトルコなど新興国市場の動揺に関するメディアとの電話会見で、マクロ経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)に基づくトルコリラの適正相場は「1ドル=5.0~5.50リラ前後」と語った。ドイツ政府は、トルコ通貨危機の打開に向けIMFの支援が有益となる可能性があるとの認識を示した。しかし、エルドアン大統領はIMFの救済を一切拒否すると言明した。

【トルコ経済指標】
20日月曜日
犠牲祭前夜祭、トルコ祝日・犠牲祭(8月21日~24日)


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*予想レンジ:15.00円~19.00円


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