【トルコリラ円、先週の動き・今週の予想】
*先週のトルコリラ円はインフレ率の高進が嫌気されて下落した。大手格付け会社のフィッチ・レーティングスは1日、トルコの20銀行と子会社の外貨建て発行体格付けを引き下げたと発表した。トルコ統計局は3日、9月の消費者物価指数(CPI)が前年同月比24.5%上昇したと発表した。米国人牧師拘束問題を原因に通貨リラが急落した8月の「トルコショック」が響いた。インフレ率は過去15年で最悪の水準となり、8月から6.6ポイントも悪化した。事前の市場予想は21%台だった。特に食品や家庭用品の上昇が大きかった。

同日には生産者物価指数(PPI)も発表され、前年同月に比べ46%も上昇した。企業は原材料やエネルギー価格の上昇、売り上げの減少、外貨建て債務の返済負担増という三重苦に直面していることが明らかになった。価格や金利の上昇で9月の乗用車・軽商用車販売台数は68%も減少した。販売の前年割れは6カ月連続となった。アルバイラク財務相は9月がインフレのピークとの認識を示したが、市場は警戒を強めた。エルドアン大統領は4日、長らく行き詰まっている欧州連合(EU)加盟交渉を今後も継続するかどうかを問う国民投票の実施を検討すると明らかにした。トルコのEU加盟交渉は2005年に正式に始まったが、国民投票の結果次第では交渉が打ち切られ、トルコは欧米諸国と一段と距離を置くことになるかもしれないとの懸念もリラの重石になった。

*今週のトルコリラ円は、保ち合いとなりそうだ。9月消費者物価指数(CPI)が前年同月比で24.52%上昇し、15年ぶりの高い伸びを示したことで、10月25日のトルコ中銀会合で利上げを行うとの見方が強まっている。トルコのアルバイラク財務相は、インフレ抑制策を今週発表する予定とし、インフレ率は今年の最終四半期に政府の目標に向けて収れんしていくとの見通しを示した。

政府による措置の具体的な成果が10月のデータに表れると予想し、トルコのインフレに関する最悪期は過ぎたとの認識も明らかにした。トルコ中銀は9月13日の金融政策決定会合で主要な政策金利を6.25%引き上げ、年24%としたばかり。インフレ率が政策金利を上回ったことで、市場はリラ買いに躊躇している。エルドアン大統領は金融引き締めを嫌っているが、通貨防衛やインフレ抑制のため、トルコ中銀が今月25日の会合で追加利上げに踏み切るかどうか注目される。

今週12日に予定されているブランソン牧師の審理も材料になろう。米国人のブランソン牧師はトルコ国内の自宅に現在軟禁されており、米国はブランソン牧師の解放を要求している。米財務省は4日、国連安全保障理事会の制裁に違反して北朝鮮との武器取引などに関与したとして、トルコ企業とその関係者3人を米独自の制裁対象に指定した。


サウジアラビアの著名な反体制記者ジャマル・カショギ氏(59)が訪問先のトルコで行方不明となり、トルコ外務省は4日、サウジ大使を呼び説明を求めた。記者の行方をめぐる両国の主張は真っ向から食い違っており、外交問題に発展しかねない状況となっている。同氏は近年米国に亡命し、米紙ワシントン・ポストで評論記事を執筆。サウジのムハンマド皇太子が進める国内改革や、サウジのイエメン軍事介入などに批判的だった。


【トルコ経済指標】
11日木曜日
16:00 8月経常収支前回-17.5億USD 予想+25.0億USD

12日金曜日
時間未定・ブランソン牧師裁判

lira1009

*予想レンジ:17.50円~19.50円


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