【ドル円相場、今週の展望】
今週のドル円は、伸び悩む展開になりそうだ。ブエノスアイレスで開かれていた20カ国・地域(G20)での1日の米中首脳会談では、両国間の貿易戦争を一時休戦とすることで一致した。米国が来年1月に予定していた対中追加関税の25%への引き上げを当面凍結し、10%に据え置く一方、中国による知的財産権の保護強化などで協議を始めることを決めた。米国は交渉期限を90日としており、妥結できなければ、今回猶予した追加関税の引き上げに踏み切る考えを示した。交渉決裂による貿易摩擦の激化はとりあえず回避された。緊張緩和を反映して、週明けの東京市場ではドルが買われ、日経平均株価は上昇した。

ただ、米中間の根本的な問題が解決されたわけではない。米国は中国に対し技術移転の強要停止や知的財産権の保護、戦略的産業への国の補助終了などの構造改革を迫っているが、中国は米国の一連の要求が全て自国の発展を阻むための戦略と受け止めており、両者の溝は深く今後も交渉は難航するだろう。また、G20の首脳宣言では、貿易は経済成長の重要なエンジンと位置付けたものの、米国の反対で「保護主義と闘う」との文言は盛り込まれなかった。英国の欧州連合(EU)離脱問題もあり、リスクオンモードにはなりにくい。

また、最近の原油安によりインフレ圧力が減退し、金利低下圧力になるとの見方もあり、ドルを買い進めにくくなっている面もある。今年も残り1カ月となった。今月は19日に米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催され、米連邦準備制度理事会(FRB)は今年4回目の利上げ(2.50%⇒2.75%)を行うと見られている。市場は利上げによりも来年の利上げペース、そして利上げのピークに関心を寄せており、声明に注目している。その意味で、5日のパウエルFRB議長の議会証言が材料視されそうだ。

上下両院の合同経済委員会で経済見通しについて発言する。28日には「中立金利(3.00%)」に言及したことで、市場には利上げ打ち止め観測が台頭した。来年の利上げサイクル停止の可能性も含めて、どのような政策姿勢を示すか注目される。7日に発表される米11月雇用統計では、失業率は3.7%(10月3.7%)、非農業部門雇用者数は前月比20.5万人増加(10月+25.0万人)と見込まれている。なお、セントルイス地区連銀のブラード総裁は、米経済成長に生じている可能性のある「亀裂」が、来年のFRBの金融政策をめぐる討議を方向付けるとの見解を示し、米経済が2019、20年に減速することに疑念はなく、FRBが現在のペースで利上げを継続することは一層困難となるだろう」とした。ブラード総裁は来年の米連邦公開市場委員会(FOMC)で投票権を持つ。115円は意識されるものの、この上値抵抗線を上回ることは困難だろう。

*CFTC建玉11月27日時点:ファンドのドル買い・円売りは10万4324枚(前週比-4259枚)と減少した。総取組高は23万1711枚と前週比8567枚の増加。
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<今週の主な経済指標>
3日は米国11月製造業PMI、5日は米国11月ADP雇用統計、6日は米国10月貿易収支、7日は米国11月雇用統計。

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*予想レンジ:112.00円~115.00円


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