【ドル円相場、今週の展望】
*今週のドル円は、次第に上値が重くなりそうだ。週明け21日の東京外国為替市場のドル円相場は、NYダウの上昇を受けた日経平均株価の堅調な動きを反映して109円80銭近くまで上昇したが、その後は上値の重い展開となっている。この日発表された中国の昨年10-12月(第4四半期)GDP成長率は、前年同期比6.4%増と、2009年以来の低成長にとどまった。7-9月(第3四半期)は6.5%増だった。債務削減の取り組みや米国との貿易対立に伴って景気が減速したことが裏付けられたが、成長鈍化が懸念されているほど深刻ではないことも示唆され、ドル円も押し上げられた。12月日銀短観で示された大企業製造業の2018年度下期想定為替レートの109.26円だった。109円台半ばを超える水準では本邦輸出企業からのドル売りが出やすくなるのだろう。

ドル円の売り材料が多い。利上げ打ち止め観測や米中通商協議、米連邦政府機関閉鎖の長期化が考えられる。これらに加え、今後は日米通商協議が警戒される。NY連銀のウィリアムズ総裁は先週の講演で、2019年の金融政策の方向性について「必要なのは用心深さであり、忍耐であり、適切な判断」と述べ、追加利上げを急がない姿勢を示した。欧州やアジアの景気減速のほか、米国では財政刺激の効果が弱まり、金融環境も以前よりも緩和的ではなくなっていると説明した。

さらに米政府機関閉鎖なども新たなリスク要因とした。およそ1カ月に及ぶ政府機関の一部閉鎖により、2019年1~3月期の経済成長率がトランプ大統領の就任以来最低になる可能性があるとの指摘も出てきた。家計支出が先行き不透明感に伴って減少すると見込まれている。米中通商協議に関してトランプ大統領は19日、進展しているとの認識を示した。ただ、対中関税の撤廃を検討しているとの一部報道については「誤った報道」として否定した。同大統領は、合意が成立すれば、制裁は行わない。合意が成立しなければ制裁を行うと述べた。ただ、同大統領は「何度も協議を重ねており、中国との合意がまとまる可能性は十分にある。順調に行くだろう」と述べた。中国の劉鶴副首相は、通商協議のため30─31日に米国を訪問する予定。

一方、日米通商協議が1月中旬に開始される。が、今週からライトハイザー通商代表部(USTR)代表と茂木経済財政相による日米通商協議が開催される予定。米国側は、対日貿易赤字の削減に加え、自動車関税や対米輸出の数量制限を迫ってくる可能性がある。さらに、意図的な通貨安を禁止する「為替条項」も議題に挙がる可能性があり、現状の110円に近い水準はドル高と見なされそうだ。23日には日本の12月貿易収支が発表されるが、対米貿易収支の黒字幅が拡大している場合、市場の警戒感は強まるだろう。

今週は、22-23日に日銀金融政策決定会合が開催される。物価2.0%の目標は維持され、金融政策は現行の緩和方針が維持される見通し。22-25日には世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)が開催される。21日は英国のメイ首相が、欧州連合(EU)離脱に関する次の措置をを議会に提出する。英領北アイルランドとEU加盟国アイルランドとの国境問題に関するバックストップ(安全策)案の修正、移民の扱いで英が譲歩する可能性などが予想されているが、これに対する批判が高まった場合、リスク回避の円買いが強まる可能性がある。代替案の議会採決は29日の予定。こうした弱材料を跳ね返して、ドル円が110円を突破するのは、米中貿易協議に関して、米国側が満点を与えた場合だろうが、それは難しいだろう。

<今週の主な経済指標>
21日の米国市場は休場(キング牧師生誕記念日)、22日は米12月中古住宅販売件数、25日は米12月耐久財受注。

yen0121

*予想レンジ:108.00円~110.00円


情報提供:(株)みんかぶ
※チャートの著作権は、(株)みんかぶに帰属しており、無断で使用(転用・複製等)することを禁じます。提供している情報の内容に関しては万全を期しておりますが、その内容を保障するものではありません。また、これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、(株)みんかぶは一切の責任を負いません。