【ドル円相場、今週の予想】
*今週のドル円は、上値の重い展開が続きそうだ。米中通商問題は難航しており、早い時期に妥協点を見出すことは難しいとみられていることから、リスク回避から円買いが継続しそうだ。6月1日には中国が米国からの600億ドル相当の輸入品に対する追加関税を最大25%に引き上げる予定。英国、欧州の政治不安の高まりも安全通貨である円買い要因となろう。トランプ政権は中国のファーウェイの取り扱いをめぐり規制を一部緩和したものの、監視カメラで世界シェア首位の中国企業はハイクビジョンへの禁輸措置を検討していることから、米中の対立懸念は高まっている。新たな制裁措置が導入された場合、リスク回避的なドル売り・円買いはさらに強まる可能性がある。

メイ英首相は24日、6月7日に党首辞任を表明した。英国の次期首相はジョンソン元外務相が有力視されているが、同氏は欧州連合(EU)離脱に対して、メイ首相より強硬な路線をとる可能性が高いとみられている。英国の「合意なき離脱」を選択する可能性があり、ポンド下落の可能性が高く、円が対ポンドで上昇する可能性がある。

また、23-26日の欧州議会選で右派勢力が拡大したことから、欧州の政治不安が意識され、ユーロに対するドル買いが優勢となる可能性がある。同様にユーロ円の下落も予想されるため、この影響でドル円の上値は抑えられそうだ。

トランプ大統領は先週末、令和元年に初国賓として来日したが、懸念された通商交渉の難しいやり取りはなかった。両国とも友好を全面に押し出した格好だが、トランプ大統領は26日、日米協議では「農業と牛肉が重点的な対象となっている」とツイート。「日本の7月の選挙後まで多くを待つことになるだろうが、そこでは大きな数字が予想される」と指摘した。いわば貿易協議の核心は参院選(7月21日)以降に先延ばしされた格好だが、市場はこの日程を意識するため、ドルの上値は抑えられそうだ。

先週24日、トランプ政権は、通貨安誘導していると判断された国からの輸入品に関税を課すことを提案した。連邦公報に掲載された提案によれば、競争的な通貨切り下げを行っていると米財務省が認定した国からの輸入品に関税を課すよう、米国を拠点とする企業が求めることができる内容。現時点では該当する国はないが、通貨の「過小評価」に照準を定めることでより幅広い基準も設定することになるため、今後の動向が注目される。

今週は31日の中国5月製造業PMIと米4月個人消費支出(PCE)価格指数が注目される。中国PMIは、米中貿易戦争が激化したことの影響がどの程度かがポイント。米4月個人消費支出(PCE)価格指数は、特にコア指数を米連邦準備制度理事会(FRB)がインフレ指標として注視している。パウエルFRB議長は、インフレ率の鈍化は一時的として「忍耐強い様子見」の金融政策継続を繰り返している。しかし、4月の米コア消費者物価指数(CPI)は前月比+0.1%に留まった。4月PCEコア指数が鈍化していた場合、インフレ率の鈍化が一時的ではないとの見方が強まり、利下げ見通しが強まる可能性がある。

経済協力開発機構(OCED)は、2019年の世界経済成長率見通しを3月時点と比べ0.1ポイント低い前年比3.2%に引き下げた。米中による関税引き上げと中国経済の減速が主因。米国がさらなる対中関税を発動した場合、最悪のケースで世界の経済成長率が0.6ポイント下押しされるとの試算も公表し、国際協調の強化などを提言した。日本の19年の成長率見通しも、輸出・生産の減少を背景に小幅下方修正した。 世界経済の停滞懸念が漂う状況では、ドル買いが強まるよりは、安全通貨の円需要が次第に高まりそうだ。

<今週の主な経済指標>
28日はトランプ大統領帰国、29日は黒田日銀総裁発言、31日は4月失業率・有効求人倍率、4月鉱工業生産、4月商業販売統計、4月新設住宅着工戸数。海外経済関連では、27日が米国がメモリアルデー、英国がバンクホリデーでそれぞれ休場。28日は米3月FHFA住宅価格指数、30日は米1-3月期GDP改定値、31日は中国5月製造業PMI、米4月個人所得・個人支出などが発表予定。

*CFTC建玉5月14日時点:ファンドのドル買い・円売りは6万1580枚(前週比-3万0137枚)と減少した。総取組高は18万0573枚と前週比2万0889枚の減少。


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*予想レンジ:108.00円~111.00円


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