【トルコリラ円、先週の動き・今週の予想】
*先週のトルコリラ円は、イスタンブール市長選の再選挙に伴うトルコ政治への不信感と米国との関係悪化懸念を受けて下落した。トルコの選挙管理当局は今月6日、与党・公正発展党(AKP)の候補が予想外の敗北を喫したイスタンブール市長選のやり直しを決定した。エルドアン大統領率いるAKPは、3月に行われたイスタンブール市長選の結果について異議を申し立てていた。3月に勝利した中道左派野党・共和人民党(CHP)のイマームオール氏はこの決定を「不誠実」としながらも、引き続き戦う決意を表明した。

トルコが予定しているロシア製ミサイル防衛システム「S400」の購入を巡って、トルコと米国の関係悪化への警戒感が広がり、トルコリラを押し下げた。トルコのアカル国防相は、ロシア製ミサイル防衛システム「S400」購入に対して米国が制裁を発動する可能性に備えていると述べた。一方、ロッキード・マーチン製の最新鋭ステルス戦闘機「F35」の購入に関する米国側との協議が改善しているとも指摘した。

トルコ中央銀行は21日、通貨防衛目的の一時的な金融引き締めを解除し、主要政策金利を事実上1.5ポイント引き下げた。トルコ中銀は1週間物レポ入札を金利24%で再開した。入札は9日から中止され、25.5%の翌日物金利で資金が供給されていた。レポ入札再開に先立ち、トルコ中銀はリラのスワップレートも25.5%から24%に引き下げていた。リラはドルに対し一時1.1%下落し、新興市場通貨の中で最も値下がりした。


*今週のトルコリラ円は、軟調な展開が続くだろう。高いインフレ率、再選挙に伴うトルコ政治への不信感、ロシア製ミサイルの購入を巡る米国との軋轢がいずれもトルコリラの重石になっている。エルドアン大統領は、西側はトルコリラ相場とインフレおよび金利に圧力をかけているが、こうした「ゲーム」は6月23日に予定されているイスタンブール市長選やり直し投票後に阻止されるだろうと述べた。同大統領は、イスタンブールで行った大学生とのテレビ質疑応答で、「前回の投票前、西側はトルコリラ相場と金利、インフレに圧力をかけてわれわれを追い込もうとした。われわれがやり直し投票を乗り越えれば、こうしたゲームは阻止される」と述べた。 3月の市長選では、野党候補が勝利とされた後、最高選挙管理委員会がこの結果を無効としてやり直し投票の実施を発表した。

エルドアン大統領は24日、低迷する自動車販売へのてこ入れとして、6月末に切れる乗用車に対する特別消費税の減税措置を延長するかもしれないと述べた。 自動車販売協会(ODD)が今月3日に発表したデータによると、4月のトルコの乗用車と小型商用車の販売台数は前年同月比56%減少。1─4月は前年同期比48%減となった。トルコ政府は昨年11月から一部乗用車で特別消費税の減税を実施。その後、減税の期限を6月末まで延長した。エルドアン大統領は減税再延長の可能性について、イスタンブールでの商工関係者との夕食会で明らかにした。イスタンブール市長選のやり直しを来月に控え、同大統領率いるイスラム系与党・公正発展党(AKP)の候補者への支持を集める狙いがあるとみられる。

経済協力開発機構(OECD)は21日、最新の経済見通しを発表し、今年のトルコの成長率がマイナス2.6%になると予想した。従来予想(マイナス1.8%)を下方修正した。2020年の成長率は1.6%(従来予想は3.2%)に引き下げた。地方選挙後に投資家の不安が続いている点を挙げた。OECDは、「家計、企業の信認回復、経済政策の質や予見可能性に対する国内外の投資家の信頼が戻ることなどが非常に重要だ」と訴えた。トルコ国債CDSが2018年9月以来の500を超えて来た。市場のトルコに対する警戒が最大級になっているようだ。

エルドアン大統領とトランプ大統領は近くトルコで、あるいは来月に日本で開催される20カ国・地域(G20)首脳会議の合間に会談する可能性があるという。エルドアン大統領がトランプ大統領をトルコに招待し、トランプ氏が受け入れる「前向きな兆し」があるという。米国とトルコは、主にトルコのロシア製ミサイル防衛システム「S400」購入計画を巡り対立している。ポンペオ米国務長官や複数の米上院議員は、ロシアから軍装備品を調達する国に制裁を科す法律に基づき、トルコへの制裁を発動すると警告している。トルコの米制裁回避は、トランプ大統領の介入頼みの様相が強まっており、市場家は両国首脳の会談の可能性に注目している。


【トルコ経済指標】
28日火曜日
16:00 5月経済信頼感前回84.7

31日金曜日
16:00 第1四半期GDP前年比前回-3.0%  予想-2.9%
16:00 4月貿易収支前回-21.4億USD  予想-28.3億USD


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*予想レンジ:17.00円~19.00円

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