【メキシコペソ円、先週の動き・今週の予想】
*先週のメキシコペソ円は大幅下落。トランプ大統領は30日夜のツイッター投稿で、関税は6月10日に発効し、「不法移民がメキシコを通って米国に流入するのが止まるまで」続くだろうと述べた。大統領はさらに、関税は「不法移民の問題が解決するまで段階的に引き上げられ、解決すれば撤回されるだろう」と説明した。

トランプ大統領はホワイトハウスが公表した声明で、同関税率は10月1日に最高25%まで達する可能性があると警告した。声明で大統領は「メキシコの消極的な協力姿勢によって、こうした多人数の流入を認めている状況は、米国の国家安全保障や経済に対する非常事態かつ異例の脅威」だと主張。「南部国境の非常事態に対処するため、国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく権限を発動する」と論じた。これを受けてメキシコペソは急落し、対円では1月4日以来の安値をつけた。

*今週のメキシコペソ円は、上値の重い展開が続きそうだ。トランプ大統領がメキシコからの全輸入品に関税を課す方針を表明した背景には、2016年大統領選の公約の柱に掲げた不法移民対策で成果が上がらないことへのいらだちがあると見られている。政権として「国境の壁」建設など不法移民の取り締まりを強化してきたが、中米諸国からメキシコを経由した不法移民は増加を続けており、米当局によるとメキシコ国境からの不法入国者は5月に10万人を超え、月単位では過去12年間で最多を記録したという。トランプ大統領が不法移民問題の交渉カードに関税を持ち出したことで、昨年11月にメキシコ、カナダと署名した北米自由貿易協定(NAFTA)に代わる「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」の批准が流動的になったことが株式市場には危惧されたようだ。

USMCAの批准手続きを担当するメキシコ政府高官は「米メキシコが良好な関係を築こうとしているなか、今回の発表は冷や水を浴びせた」と嘆いたという。米メキシコ関係の悪化は、米中貿易協議以上に米国経済にマイナス要因となろう。それはメキシコ経済に関しても同様で、メキシコペソには重石になろう。なお、トランプ大統領がメキシコ産品への制裁関税導入を表明したことに対し、米国の複数の業界団体は31日、相次いで反対の声を上げた。日米欧の自動車メーカーで構成する米自動車工業会(AAM)は、関税導入が「米国の消費者や雇用、投資に悪影響を与える」と警告。ひいては米政権が取り組む北米自由貿易協定(NAFTA)改定の妨げになり得るとも指摘した。

メキシコ銀行(中央銀行)は29日、2019年の実質経済成長率の見通しを0.8~1.8%に引き下げた。従来は1.1~2.1%だった。1~3月期実績が予想を下回ったことや、米国を中心に世界的に経済成長が弱含んでいるためとしている。予想中央値の1.3%でみると、13年(1.6%)以来の低成長になりそうだ。メキシコ経済は、左派のロペスオブラドール氏が18年7月の大統領選に勝利してから、大きな混乱が生じている。建設中だったメキシコシティ新空港のプロジェクトを中止したほか、外国投資を呼び込んできた石油鉱区入札も無期延期した。外国からの投資は大幅に減少を続け、雇用や消費にも影響が出て、格付けの引き下げ懸念が出ている。24日発表の1~3月期の実質国内総生産(GDP)の季節調整済み確定値は前期(18年10~12月期)比で0.2%のマイナスだった。前期比でマイナス成長となるのは18年4~6月期以来。石油産業の低迷が続いているほか、金融・サービス業も停滞している状況で、新政権の経済のかじ取りへの疑問や批判が高まっている。


【メキシコ経済指標】
3日月曜日
23:30 製造業PMI前回50.1、予想50.4

4日火曜日
22:00 消費者信頼感前回113.7   
22:15 外貨準備高前回$182B、予想$183B

7日金曜日
22:00消費者物価指数前年比前回4.41%、予想4.2%

peso0603

*予想レンジ:5.40円~5.70円

情報提供:㈱ミンカブジインフォノイド
*チャートの著作権は、㈱ミンカブジインフォノイドに帰属しており、無断で使用(転用・複製等)することを禁じます。提供している情報の内容に関しては万全を期しておりますが、その内容を保障するものではありません。また、これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、㈱ミンカブジインフォノイドは一切の責任を負いません。