【ドル円相場、今週の予想】
*今週のドル円は、22~24日に開催されるワイオミング州ジャクソンホールの会合をにらんで保ち合いとなりそうだ。今年のシンポジウムのテーマは「金融政策の挑戦」。金融政策以外では、米長期金利や株価動向、米中摩擦などがテーマになるという。注目されるパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長講演は23日に行われる。ここ最近のドル円は105円でサポートされ、107円では売りが強まる傾向が続いている。パウエルFRB議長講演が終わるまでは、この展開が続きそうだ。

トランプ大統領やピーター・ナバロ大統領補佐官(通商担当)は再三に渡り利下げを要請しているが、市場でも追加利下げや大幅利下げの思惑が広がっている。16日時点のCMEのFED WATCHによると、9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で0.25%の金利引き下げ(2.25%⇒2.00%)となる確率は83%を超えた。16日にはミネアポリス地区連銀のカシュカリ総裁が、景気減速に対抗するため、FRBが恐らく利下げや積極的な景気対策を実施する必要があるとの認識を示した。カシュカリ氏はここ数年の利上げが行き過ぎだった可能性もあると述べ、FRB批判を繰り返しているトランプ米大統領と同様の見解を示した。

21日には金融危機後初の利下げを決めた7月の米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨も公表される。パウエル議長は大幅な緩和サイクルのスタートではなく「サイクル半ばでの調整」だと表現したが、果たしてこれと同じ趣旨の発言をするのか、もしくは利下げを後押しするような内容なのか注目される。

14日の米債券市場では、長期金利の指標である10年物国債利回りが急低下し、一時、2年債の利回りを下回る逆イールドとなった。通常は資金回収リスクを踏まえ、償還期間が長いほど利回りは高くなる。しかし、景気に悲観的な見方が強まれば、将来の利下げを織り込んで長期金利に低下圧力がかかり、短期を下回る異例の現象が生じる。米国では1950年代半ば以降、景気後退局面に入る前には必ず逆イールドが起きた。前回見られたのは「リーマン・ショック」前年の2007年6月。今回の逆イールド現象の出現により、米国は景気後退(リセッション)に向かうとの見方も広がっているため、米国の経済指標の結果で大きく振れる場面もありうそうだ。

直近の消費者物価指数(CPI)や小売売上高などは市場予想を上回ったが、今後発表される経済指標が低調な結果となれば、景気腰折れとの見方からドルを押し下げるだろう。22日に発表される8月米製造業とサービス業PMI速報値に注意したい。トランプ大統領は先週、対中制裁関税第4弾の9月発動について、一部品目に対する関税を延期することを決定したため、リスク回避的な動きが後退したが、「安保上の理由で」ファーウェイとビジネスをしたくないと述べ、19日に何らかの決定をする意思を表明した。これに対し中国も報復措置を講じる可能性が高く、米中貿易問題の懸念がドルの上値を抑えよう。香港で「逃亡犯条例」改正案を巡る抗議活動が続き、中国政府が軍部隊の投入による鎮圧も辞さない姿勢を示していることは、リスク回避の円買い要因になろう。また、ここ最近はドルが底堅く推移しているが、CFTC建玉を見ると、ファンドはドル売り・円買いポジションを拡大させているとにも留意したい。

<今週の主な経済指標>
国内経済関連は、19日に7月貿易統計、7月首都圏新規マンション発売、21日に7月訪日外客数、22日に6月全産業活動指数、8月米製造業とサービス業PMI速報値、23日に7月消費者物価指数(CPI)。海外経済関連は、21日に米7月中古住宅販売件数、7月30-31日のFOMC議事要旨、22日に米7月CB景気先行総合指数、米経済シンポジウム「ジャクソンホール会合」(24日まで)、23日に米7月新築住宅販売件数、24日にG7首脳会議(26日まで、フランス)。

*CFTC建玉8月13日時点:ファンドのドル売り・円買いは2万4181枚(前週比+1万4181枚)と増加。総取組高は16万0271枚と前週比6933枚の増加。ファンドは2週連続でドル売り・円買いを進めた。


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*予想レンジ:104.50円~107.50円

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