【メキシコペソ円、先週の動き・今週の予想】
*先週のメキシコペソ円は下落した。世界経済の減速に対する懸念やアルゼンチンの危機を受けてリスク回避姿勢が強まり、新興国通貨には売り圧力がかかり、メキシコペソは押し下げられた。16日に大手格付け機関フィッチが、アルゼンチン国債の格付けを「B」から「トリプルC」に下げ、債務不履行の可能性を示唆した。17日、マクリ政権の財務相が辞任し、国政の不安もアルゼンチンペソを押し下げた。また、メキシコペソの下落の背景にトマトがあった。2019年5月から米国がメキシコ産トマトに課している17.5%の暫定アンチダンピング関税がそのまま継続されることになっことが嫌気されたている。アメリカとメキシコは反ダンピング調査の停止協定を結んでいたが、この協定が2019年5月に執行され、反ダンピング調査が開始された。

調査開始の理由は、アメリカの農家がメキシコが価格を不当に下げ、損害を被っていると訴えたため。これに対しメキシコの農家はダンピングを否定した。2019年9月19日が最終期限で、これでダンピングと判断された場合、関税が継続されることになるとの懸念が強まった。メキシコのトマト産業は年間約20億ドル規模で、もし関税が継続されると経済的な損失は小さくない。メキシコのマルケス経済相は21日、米政府がメキシコ産トマトの反ダンピング(不当廉売)調査を中止することに合意したと発表した。米国に輸出されるメキシコ産トマトの大多数が、国境で検査を受けることになるが、数カ月にわたる両国の対立が終了した。

*今週のメキシコペソ円は、保ち合いで推移しそうだ。メキシコ中央銀行総裁は21日、内外の景気減速でインフレに下向き圧力がかかっており、追加利下げが必要になる可能性があるとの見解を表明した。 米中貿易戦争の激化のほか、米国とユーロ圏が景気後退(リセッション)に陥る恐れがあるとの懸念が高まる中、新興国も影響を受けており、中央銀行が成長支援に向け一段の措置を講じる必要があるとの見方が出ている。

メキシコ中銀のアレハンドロ・ディアス・デレオン総裁は、メキシコの経済成長は潜在能力を下回っており、こうしたアンダーパフォーマンスは世界的な景気減速で一段と顕著になっていると指摘。「労働市場は力強いものの、成長は鈍化し、インフレは予想を下回る環境となっている」と述べた。メキシコ中銀は8月15日、政策金利を8.25%から8.00%に引き下げることを決定。利下げは14年6月以来で、中銀は国内経済のスラック(需給の緩み)拡大などに言及した。インフレ率は4.00%を下回っており、利下げへのハードルは低いと見られている。ロペスオブラドール大統領は22日、天然ガス・パイプライン事業契約をめぐり複数の企業と対立している件について、解決に向けた協議が大きく前進したと述べ、「協議は順調で、来週には合意に達するだろう」と述べた。

これは、メキシコ電力庁(CFE)が7月1日、民間企業と締結した天然ガス・パイプライン建設運営契約の一部条項の破棄をめぐり、ロンドンとパリの国際仲裁裁判所に申し立てを行っていたもの。この背景には、地域住民の反対による封鎖などやむを得ない事情により、建設が遅れた場合でも、遅延期間に発生したコストも含め、契約で定められた投資回収率を確保する対価をCFEは契約相手に支払う必要があるという契約内容が、民間企業に有利でCFEのみが損害を被る「不平等で破壊的な契約」(ロペス・オブラドール大統領)だとし、前政権下で合意されたこれらの内容の見直しを現政権が求めたことにある。民間企業は契約見直しに応じなかったため、仲裁の申し立てに至った。しかし、合法的に締結された契約内容を変更しようとする現政権の姿勢に対し、内外から強い批判が相次いでいた。


【メキシコ経済指標】
27日火曜日
20:00 貿易収支前回256.1億ドル、予想8億ドル

20:00 失業率前回3.6%、予想3.7%

27:30 メキシコ中銀インフレレポート

29日木曜日
24:00 メキシコ中銀金融政策会議議事録


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*予想レンジ:5.25円~5.55円


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