【ドル円相場、今週の予想】
*今週のドル円はレンジ相場となりそうだ。今週半ばから欧米市場がクリスマス休暇で閑散になることが予想される。24日はクリスマス・イヴでドイツ市場が休場となる。25日はクリスマスで欧米市場が休場。26日はボクシング・デイで英ドイツ市場が休場となる。

米中貿易協議が「第1段階」の合意に達した。英国の欧州連合(EU)離脱にも道筋がついた。今年最後の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、米連邦準備制度理事会(FRB)が金融政策を当面の間、現状維持とすることも判明した。ニューヨーク連邦準備銀行のウィリアムズ総裁は18日、2020年の経済見通しについて「2%程度の成長が続き、堅調に雇用は拡大し、インフレ率は長期的な目標である2%に近づく」と説明。現行の金融政策スタンスは「成長を維持し、インフレ目標に到達するのに適切な位置にある」と述べた。その上で金融政策については「経済環境が変化して見通しが修正されるなら、われわれはそれに応じて政策を調整する準備がある」と述べ、必要なら追加緩和も検討する姿勢を示した。

なお、インフレ率に関しては伸びが鈍化している。11月の米個人消費支出(PCE)物価指数は、前年同月比1.5%上昇となり、伸びは2カ月連続で加速したものの、米連邦準備制度理事会(FRB)が目標とする2%には13カ月連続で届かなかった。前月比は0.2%上昇と前月から変わらず。インフレ動向の長期的な傾向を表す数値としてFRBが注目する食料品とエネルギーを除いたコア指数も0.1%上昇と同じだった。コアの前年同月比は1.6%上昇。伸びは前月(1.7%)から鈍化し、11カ月連続で2%を下回った。

トランプ大統領弾劾訴追もほとんど材料視されていない。米下院は18日にウクライナ疑惑をめぐりトランプ大統領を弾劾訴追したが、与党共和党が多数派を占める上院で開かれる弾劾裁判で「無罪」となるのが確実な情勢。米キニピアック大が16日に公表した世論調査によると、トランプ大統領の支持率は43%で、先週公表の前回調査比で2ポイント上昇した。10月下旬の調査比では5ポイント上昇。ウクライナ疑惑をめぐる下院の弾劾調査が、支持率にマイナスの影響を及ぼしていないことを示した。

リスク回避要因は後退し、金融政策にも大きな変化が見込めないことから、ドル円相場はレンジ相場が続きそうだ。ただ、長期的な観点からは米中貿易協議に関しては、第2段階の協議はいつ開始されるのか、それは合意されるのか困難なのか、第3段階の協議はどうなるのかというように懸念要因は尽きない。なお、格付け会社フィッチ・レーティングスは17日、米中の「第1段階」の通商合意が貿易摩擦を緩和させたとしつつも、摩擦は解消されたわけではなく、再燃するリスクが残っているとの認識を示した。とりわけ技術の分野を巡る対立は貿易戦争の完全な解決への主要な障害になると指摘した。

ブレグジットに関しても、2020年1月末に離脱するのはいいとしても、来年末までの「移行期間」中に英国と欧州連合(EU)の通商交渉がまとめられるのか予断を許さない。

朝鮮半島の地政学リスクにも注意したい。北朝鮮は、非核化を巡る米朝協議の期限を年末に設定して米国に譲歩を求めており、クリスマス前後に「新たな道」に踏み切る可能性を示している。これに対しトランプ大統領は、必要なら北朝鮮に軍事力を行使すると警告したが、朝鮮人民軍総参謀長は「米国がわが国に軍事力を行使すれば、直ちに同様の行動を取る。米国にとって悲惨なことになる」と警告した。朝鮮半島の地政学リスクへの警戒感が高まる可能性がある。

CFTC建玉明細では、ファンドの「ドル買い・円売り」ポジションが4万2000枚を超え今年6月以来の高水準に達している。現状のドル円相場は108~110円のレンジが継続しているが、110円ブレイクが困難と判断された場合、ポジションの巻き戻しが起こり、急激な円高に陥る可能性がある。特に、年末・年始はドル円絡みではなくトルコリラ円の急落に誘発される可能性があるため、下方リスクに注意したいところだ。今年1月3日に円が急騰した「フラッシュ・クラッシュ」はまさにトルコリラの急落が原因だった。


<今週の主な経済指標>
23日は、米耐久財受注、米新築住宅販売件数、24日は日銀金融政策決定会合議事要旨、25日は企業向けサービス価格指数、26日は本邦建設工事受注・住宅着工件数、米新規失業保険申請件数、27日は本邦失業率・有効求人倍率・小売売上高、中国工業企業利益・経常収支確定値、欧州中央銀行(ECB)経済報告など。


*CFTC建玉12月17日時点:ファンドのドル買い・円売りは4万2062枚(前週比-1620枚)と減少。総取組高は17万8529枚と前週比2万0171枚の減少。

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*予想レンジ:107.50円~110.50円


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