【ドル円相場、今週の予想】
*今週のドル円は上値の重い展開が続くだろう。世界保健機関(WHO)が30日に「緊急事態」を宣言し、新型肺炎の感染者が中国国内で1万人に迫る勢いになっていることから、リスクオフモードが強まり先週末のNYダウは600ドル以上も急落した。この流れを受けて、週明け3日の東京市場のドル円は108円を上回る円高進行が懸念されたが、中国人民銀行(中央銀行)が3日に、総額1兆2000億元(1738億1000万ドル)を緊急資金供給したことから安心感を生み、ドル円は108円50銭近辺で堅調に推移している。 しかし、中国国内で新型コロナウイルス感染による死亡者は2日時点で361人となり、感染者は1万7205人に達した。2002~03年に流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)感染者数を上回った。

世界保健機関(WHO)によると、中国でのSARSの感染者数は5327人だった。2003年のSARSコによる市場への影響は、ドル円が2002年12月高値125.73円から2003年5月安値115.10円まで10.63円、約8%下落し、日経平均株価は、2002年12月高値9320円から2003年4月安値7603円まで1717円、約18%下落した。3日に行われた中国人民銀行による緊急の資金供給だけで食い止められるか予断を許さない。米国家経済会議(NEC)と大統領経済諮問委員会(CEA)は新型コロナウイルス感染拡大の米経済への短期的および長期的な影響を予備的かつ予防的な観点から分析しているという。トランプ大統領は1月31日、中国を訪問し感染拡大のリスクがある外国人の入国を一時的に拒否する命令に署名した。米国市民や永住者の直系親族は例外となる。

米政府は中国から米国への到着便も7空港に限定した。新型コロナウイルス感染拡大による影響で中国の石油需要は消費全体の20%に相当する日量300万バレル程度減少した。この規模の落ち込みは恐らく2008年から09年の世界金融危機以降で原油市場が見舞われた最も大きな需要落ち込みなる。中国は16年に米国を抜いて世界最大の原油輸入国になっており、世界のエネルギー市場への影響は大きい。中国は日量約1400万バレルを消費しており、日本とフランス、ドイツ、イタリア、スペイン、英国、韓国の合計に匹敵する。今後は渡航や輸出入の制限により中国経済の成長鈍化が懸念されている。エネルギー関連株が押し下げられ、株式市場全体の重石になることが予想される。米国や中国の経済指標が予想を下回った場合、ネガティブな市場反応が予想される。リスクオフモードが継続し、今週のドル円は上値の重い展開になるだろう。

なお、トランプ大統領は4日、今後1年の施政方針を示す「一般教書演説」を上下両院合同会議で行う。上院ではウクライナ疑惑を巡り弾劾裁判が進められているが、11月の大統領選での再選をにらみ、これまでの経済面での成果を強調するとみられる。 上院の弾劾裁判ではトランプ氏に無罪評決が下されることはほぼ確実だろう。トランプ大統領の政策が国内のブルーカラー労働者や中間層を支援していると主張し、最近の中国との通商合意や北米自由貿易協定(NAFTA)に代わる新協定の締結も強調。米国の軍事力を称賛し、明るい米国の未来像を語るという。 今週は米経済指標が多く発表される。1月ISM製造業・非製造業景気指数や1月雇用統計など。雇用統計では非農業部門雇用者数予想が前月比+15.6万人で12月の前月比+14.5万人から改善する見込み、平均時給予想も前年比+3.0%で12月の前年比+2.9%から上昇が見込まれている。

<今週の主な経済指標>
3日(月):本邦製造業PMI・自動車販売台数、米ISM製造業景況指数、米大統領選のアイオワ州党員集会(民主、共和)など、4日(火):トランプ大統領一般教書演説、5日(水):米貿易収支、米ISM非製造業景況指数、6日(木):米労働生産性、7日(金):本邦景気一致指数、米雇用統計など.。

*CFTC建玉1月28日時点:ファンドのドル買い・円売りは3万6025枚(前週比-8676枚)と減少。総取組高は18万4919枚と前週比1万8660枚の減少。

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*予想レンジ:107.00円~110.00円

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