「NY金は短期的にレンジ相場、長期的な上昇基調は継続」
昨日はNYダウが2万6000ドル台に上昇したことを受けて、安全資産である金が下落した。

昨日発表された経済指標が良好だった。
5月のISM非製造業景況指数は45.4と前月の41.8より改善した。
5月ADP全米雇用報告では、非農業部門民間就業者数が前月比276万人減と、4月から減少幅が大きく縮小し、市場予想の900万人減も大幅に上回った。

景気回復期待が高まり株価が大きく上昇し、安全資産である金には売りが強まった。
恐怖指数であるVIXもじりじりと低下し20ポイント台で推移している。

市場の不安心理が後退し一時1690.30ドルまで下落した。ただ、終値は1700ドルに戻した。

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金の地合いは底堅いが、これは「米中の対立」、「世界的な金融緩和」が要因として考えられる。
トランプ大統領は、中国政府が香港に国家安全法を導入したことを受けて、香港に与えている優遇措置の見直しや、中国人留学生や研究者などへの米国入国制限などを発表した。

また、9月以降に延期するG7サミットで韓国、ロシア、インドやオーストラリア等を招待し、中国包囲網の形成を狙っている。今年が大統領選挙の年であることを考えると対中姿勢はさらに強硬になると考えられる。

2日にはポンペオ国務長官が、1989年の天安門事件で民主化を求めた元学生リーダーら4人と面会し、4日で事件から31年になるのを前に中国を牽制した。当然ながら中国の反発が予想され、米中関係の更なる緊張が強まるだろう。

また、世界の中銀が緩和策を強め実質的にゼロ金利政策を維持していることが、利子を産まない金には強力なサポート要因となっている。

先物市場ではファンドの買いは減少傾向にあるが金現物需要は旺盛。
3日時点の金ETFは1133.37トンと年初来最大と、年初から26.9%も増加した。

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短期的には調整安となっても、こうした背景から長期的に上昇基調は維持されよう。
NY金は当面の間、1650~1750ドルのレンジで推移すると予想する。