「白金は上値拡大の可能性あり」
*白金最大の生産国である南アフリカでは、鉱業会議所のバクスター最高経営責任者(CEO)が5月26日、新型コロナウイルス感染拡大について、「影響は非常に大きい。鉱物生産量は今年、8~10%程度の打撃を受けることになりそうだ」と述べた。

新型コロナ感染拡大防止のため、3月末に始まった全国的なロックダウン(都市封鎖)で、南ア国内の鉱山は一時的な閉鎖を余儀なくされた。南ア政府は6月1日からの鉱山再開を許可したが、同国産金大手ハーモニー・ゴールドのスティンカンプCEOは、フル生産に戻るには1カ月かかるとの見通しを示した。また再開したもののウィルス感染拡大も懸念されるため通常の操業に戻るにはさらなら時間を要する可能性がある。これはとりもなおさず供給不足懸念を強める。

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CFTC建玉明細を見るとファンドの買い越しが拡大していることがわかる。年初には6万枚を超えていた買い越しは3月末に2万枚を下回り、4月21日には1万5287枚まで減少した。その後増加に転じ5月26日時点には2万3000枚まで買い越し幅が拡大している。


*新型コロナウィルスによる景気後退懸念を受けて世界の中銀は相次いで金融緩和策を実施した。5月中旬以降に欧米各国ではロックダウン(都市封鎖)を解除し、経済活動の再開を図った。こうした措置を背景に楽観的な見方が強まり世界の株価は反発に転じた。NYダウは2万6000ドルを回復しコロナショック以前の水準に戻った。

産業用貴金属である白金相場もほぼこれに連動して上昇し、NY白金は800ドルを明確に上抜け、先月20日には一時943ドルと年初来の高値をつけおよそ3カ月ぶりの高値となった。

需給面での支援要因もあった。ワールド・プラチナ・インベストメント・カウンシル(WPIC)が5月18日に発表した2020年第1四半期(1~3月)の世界白金需給は推定で供給合計が55トン、需要合計が51トンで差し引き4トンの供給過剰だった。

白金の主要な消費先である、自動車、宝石、工業、投資家からの需要がいずれも減る見込みだが、新型コロナウイルスによる影響は総じて懸念していたほどではなく、今年の見通しは従来の想定よりは良いと指摘された。

ちなみにジョンソン・マッセイ(JM)社による2019年の世界白金需給は推定で、供給合計187.6トン、需要合計196.0トンで差し引き8.4トンの供給不足だった。

しかし、中国政府が香港統制を強化する「国家安全法」の導入を推進したことを受けて、米中間の緊張が高まるとの懸念が強まると株価が反落に転じ、白金相場にも利益確定売りが出て900ドルを下回った。ただ、下げ幅はそれほど大きくなく850ドル割れでは買い戻しが入っている。

今年が米大統領選挙の年であることを考えると米国の対中姿勢は一段と厳しさを増す可能性が高いが、一方で、世界経済の足枷となっている新型コロナウイルスによる影響は徐々に緩和されている。「第二波」への懸念があるもののワクチン開発への期待も高く、最悪期は脱したと言えるのではないか。

*一方、新型コロナウィルスの影響により自動車産業が世界的規模で打撃を受けていることは需要面では重石になろう。世界的な自動車業界の調査会社であるJATO Dynamicsによれば、2020年3月の世界の自動車販売台数は、昨年同月比39%減となる555万台だったという。これは2008年11月の世界金融危機の時の25%減をも上回り、1980年以来、対前年比で最も大きな減少となった。
こうした背景から白金相場の上値には過度の期待は難しいだろう。
以上を踏まえて、NY白金相場は800~1000ドルのレンジ相場で推移すると予想する。

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東京白金は200日移動平均線が3000円近辺にあり、これをブレイクできるかどうかがポイントだろう。
仮にNY白金=1000ドルとなれば、1ドル=108~109円として3475~3500円に上値余地が拡大する可能性がある。