「金は季節要因でレンジ相場継続か」  
*米連邦準備制度理事会(FRB)は、9、10日の2日間で開催した米連邦公開市場委員会(FOMC)で、事実上の「ゼロ金利」、「量的金融緩和」の維持を決定した。6月に入り米経済指標に改善に兆しが見られ、特に5月雇用統計は予想以上に改善していた。世界各国でロックダウン(都市封鎖)が徐々に解除されたタイミングもあり、今後の経済活動への期待が高まり、NYダウは2万7000ドルを回復した。

しかし、パウエル議長は、景気が一部で持ち直している事を認めつつも、「人々が感染リスクの回避に安心感を持つまで景気は完全に回復しない」と強調した。失業者の復職にも数年かかるとして、「利上げを検討することさえも考えていない」と明言し、市場の楽観論を牽制した。

*新型コロナウィルスによる世界の死者は43万人を超えているが、米国の死者は11万人以上と世界最多。米ジョンズ・ホプキンス大学システム科学工学センター(CSSE)によると、新型コロナウイルスの世界の感染者が日本時間16日、累計800万人に達した。米国で210万人を超え、ブラジルが90万人に迫るほか、ロシアも50万人を上回っている。特に南米は、貧困による医療や感染対策の遅れに加え冬に入るためウィルスが増殖しやすいという。また、米国では全州で経済活動が再開され、また全国的なデモの広がりを背景に感染「第2波」が警戒されている。中国では北京で集団感染が発生し、感染再拡大が懸念されている。欧州(EU)でも国境を越えての往来が緩和されていることから感染が再び拡大している。

*FRBは、ゼロ金利を少なくとも2022年末まで継続し、金融緩和の長期化が見込まれている。新型コロナウィルス「第2波」への警戒は経済活動の足かせになり、景気回復を遅らせるだろう。こうした環境の中で、安全資産である金は底堅く推移している。ただ、ファンドの買いは縮小傾向にあり、レンジ相場から抜け出せそうにない。

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CFTC建玉明細を見ると直近のファンドの買い越しは20.8万枚と年初の32~33万枚から3割以上も減少している。季節的に6月は4-6月期末、半期末であり、水準的にも利益確定売りが先行されやすいのだろう。

一方、「安全資産」需要を背景に金ETFは増加し、6月15日時点で1136.22トンと年初来の最大保有となった。年初から27.2%増加で、2013年4月以来の水準となった。
*先物市場ではファンド筋が買い越しを減らしている一方で、現物市場では金の保有が拡大している。景気先行きについて強気と弱気の見方が交錯しており、株価も不安定な状況で、安全資産である金需要は継続している。

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NY金は現在1700~1750ドルをコアとしたレンジで推移しているが、長期的には低金利と金融緩和がもたらす「ドル安」と「インフレ」により、1750~1800ドルのレンジに切り上がっていくと予想する。

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