【トルコ中銀は金利据え置き、黒海要因は複雑】

トルコリラは17~18日、対ドルで史上最安値を更新した。一時1ドル=7.4リラ台に迫り、2019年末からの下落率は20%近くに達した。トルコ中銀は国営銀行を通じて間接的に為替介入しているが、外貨準備高(金を除く)は7日時点で460億ドル(約4兆8千億円)と、19年末から4割超も減少しており、介入資金の底が見えてきた状態。

そこを狙って投機筋が売りを仕掛けるのではないかと懸念されていた。
トルコリラ、8月の急落が思い返される。

主要な政策金利である1週間物レポ金利は8.25%と直近のインフレ率(およそ12%)を大きく下回っており、実質金利(名目金利からインフレ率をマイナスしたもの)はマイナス状態で、リラ売り圧力が働いている。

リラ安を阻止するためには当然ながら利上げが必要とされる。トルコの現状では少なくとも4%を超える利上げが必要と思われるが、景気刺激を優先するエルドアン大統領は利上げを牽制している。

しかも、エルドアン大統領は金利が下がれば物価も下がるという考えに固執しており、以前から「金利がさらに下がることを望む」と中銀に圧力をかけている。

もっともエルドアン大統領の支持基盤が建築・建設業なので利下げを主張する必要があるとも言われているが。


エルドアン大統領は昨年7月、「利下げ要求に従わない」としてチェティンカヤ中銀総裁を解任した。後任には副総裁だったウイサル氏をあてた。ウィサル総裁は就任以降、エルドアン大統領の意を汲んで、20年5月まで9会合連続、計15.75%もの利下げを実施した。


利上げができないトルコ中銀はリラ安を阻止するため、7日には1週間物レポ金利を使った市中銀行への資金供給を停止した。より金利の高い後期流動性貸出金利(11.25%)などに誘導している。景気浮揚のため国営銀などに促し、政策金利を大きく下回る水準での個人・企業向け融資の金利も引き上げた。

トルコ中銀は18年夏、同様の引き締め策でリラ安を阻止しようとしたが失敗し、通貨危機「トルコショック」を引き起こしており、市場はトルコショックに身構えていた。


今週20日、トルコ中央銀行は、主要政策金利の1週間物レポ金利を8.25%に据え置くことを決めた。据え置きは市場の予想通り。

トルコ中銀は声明で、新型コロナウイルスの世界的流行に伴う経済への打撃が和らぎ、5月以降の景気回復が「勢いを増している」と分析。ただ、今後の行方は感染拡大を封じ込めることができるか否かにかかっており、内需・外需の先行き不透明感が依然強いとして、金利の据え置きを決めたと説明した。トルコ中銀は5月に0.5%の利下げを決定。その後6、7月の会合では主要政策金利を据え置いていた。

国際通貨基金(IMF)は20年の成長率をマイナス5%と予測していている。

トルコ経済は1~3月に前年同期比4.5%増の成長を記録。しかし、5月の失業率は13%近くまで増え、7月の消費者物価指数(CPI)上昇率は前年同期比11.73%の高水準となっている。


しかし、リラに売り圧力が強まるかと思いきや、下値はサポートされている。
 
19日、ブルームバーグ通信は、「トルコが黒海でエネルギー資源を発見し、天然ガスの可能性が高い」と報道した。好材料が見当たらない状況での久しぶりの買い材料だっただけに、市場は意外感をもって反応したようだ。


ただ、周辺国の権益が絡む問題もあり、楽観視はできないだろう。黒海のどの地点で採掘されるかにもよるし、仮にトルコ領内としても採掘の実現化までには年月を要する。周辺のロシアや東欧諸国との摩擦も懸念される。トルコは現在も東地中海の権益を巡ってギリシヤや欧州連合(EU)と対立している。

トルコは日本同様にエネルギーをほぼ100%輸入に依存している。天然ガスの輸入は2019年はパイプライン経由の輸入量が313億立方メートルに達した。最大の輸入元は146億立方メートルのロシアで、次いでアゼルバイジャン(92億立方メートル)、イラン(74億立方メートル)で、周辺国との協調が欠かせない。

様々な要因が絡み合い、黒海要因だけでリラが上昇していくのも難しいだろう。

トルコリラ円は、当面の間、14~15円のレンジで推移しそうだ。

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