【EUとの交渉決裂か?ポンドは下落基調強まりそう】
ポンドの下落基調が鮮明になっている。
欧州連合(EU)離脱に伴う貿易交渉が難航していること、新型コロナウイルスによる経済への打撃が大きいことが要因。
今週は15日に8月英雇用統計、16日に8月消費者物価指数(CPI)と卸売物価指数(PPI)、17-18日にはイングランド銀行(BOE、英中銀)金融政策委員会が開かれる。
8月雇用統計は、失業率7.6%と前回の7.5%より下振れした。
8月消費者物価指数(CPI)は、前年同月比0.2%上昇だった。2015年12月以来4年9カ月ぶりの低水準で、1.0%の上昇を記録した7月から大幅に減速した。
17-18日にはイングランド銀行(BOE、英中銀)金融政策委員会が開かれる。
新型コロナの感染拡大を受けて3月に政策金利を過去最低の0.1%まで引き下げたが、追加緩和の可能性がある。ベイリーBOE総裁は8月末に「マイナス金利も含め、緩和手段は他にもある」と発言した。
BOEは、金融機関が中銀に持つ預金の一部に対して、マイナス金利を適用する政策を導入するのではないかとの観測が広まっている。導入された場合、市中金利は低下しポンドは一段安となりそうだ。
EU離脱に伴う貿易交渉の難航は決裂の様相を呈してきたことも大きな懸念要因。英国は今年1月末にEUを離脱したが、12月末までは「移行期間」としている。期間中はEU加盟国と同様の関税優遇などを受けられるが、来年からは優遇措置もなくなる。
経済活動の混乱を避けるため、両者は自由貿易協定(FTA)締結に向けて交渉を進めているが、9月に入り、関税や漁業権など多くの分野で意見の対立が表面化した。ジョンソン首相は7日、10月中旬までに合意できなければ「FTAなしの離脱もやむを得ず」との声明を発表し、市場には動揺が広がった。
しかも英政府は9日、今年1月末の離脱に伴って発効した英EUの国際条約「離脱協定」の一方的なほごを可能にする法案を議会に提出し、14日の下院で基本方針が承認された。
EUは法律違反と激しく英国を避難し、英EU関係はEU離脱が決まった2016年の国民投票以降、最悪の状態に陥っている。
英国がEUの「関税同盟」「単一市場」から脱退する年末までにFTAがまとまらなければ、英EU間の貿易や物流に大きな混乱が生じる恐れがあり、「合意なき離脱」という最悪の事態に陥ってしまう。
そんな中、15日、英国と欧州連合(EU)の自由貿易協定(FTA)締結交渉で主要な懸案の一つとなっている英沖合でのEU加盟国の漁業権の在り方をめぐり、英国がEUに妥協案を提示したと報じた。
英EUは漁業問題をめぐって対立が先鋭化。英国はこれまで「漁業での主権を取り戻す」という原理原則に固執し、EUとの話し合いがまともに進まなかった。報道が事実なら、英国は合意形成に向けて態度を大きく変化させ始めたと言えそうだ。
ただ、英沖合での漁業に携わっているEU加盟国は英国の提案に慎重かつ懐疑的な見方を示し、フランスは拒否したという。
英国経済の悪化も大きな懸念要因。英国の第2四半期(4~6月)実質国内総生産(GDP)は前期比年率で59.8%減と、1955年の統計開始以来で最大の下落幅を記録した。
日本(28.1%減)や米国(31.7%減)、ユーロ圏(39.4%減)に比べて落ち込みは大きい。
このような状態で英国がEUとの交渉が決裂となれば、ポンドは一段安となる可能性が高いだろう。
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