【ドル円今週の予想(3月29日)】
*予想レンジ:108.00~111.00円。
*今週のドル円は110円にトライする場面がありそうだ。米国の経済回復期待や史上最高値を更新したNYダウ、1.6%を超える水準で推移している米長期金利等がサポート要因となってドルの下値は固く、ドル円は押し目買いが継続しよう。バイデン政権の第2弾経済対策への期待感、3月米雇用統計の改善予想もドルを押し上げよう。

先に新型コロナウイルス救済法案(1.9兆ドル)が可決されたが、これに続く経済支援策である「ビルド・バック・ベター(より良き再建)」計画(3-4兆ドル規模)が31日に発表される。バイデン大統領は25日、米経済の長期的な再生計画を発表する方針を表明し、中間層のための新たな「パラダイム」として、中国に対する米国の立場を強化する投資やインフラ支出の大幅拡大を約束した。就任後初の会見では「パラダイムを転換したい。富だけでなく勤労が報われるようにしていく」と述べ、医療支援の拡充のほか、現状で「米国の最富裕層の懐を肥やす」ことにつながっているシステムに対処するための税制改革を示唆した。

31日に予定しているピッツバーグ訪問の際に経済再生プログラムを発表する意向を示した。それによれば、長期計画の要素の1つは科学技術分野への投資加速で、医薬品や人工知能(AI)、量子コンピューターなどへの連邦レベルの支援を約束した。また研究開発支出について、対国内総生産(GDP)比0.7%の現行水準から、2%に引き上げたい考えを示した。米国の経済回復への期待感がさらに高まりそうだ。

ニューヨーク連邦準備銀行が26日発表した今年1~3月期の米実質GDP(国内総生産)予想は、年率換算で前期比6.1%増となった。19日時点の6.3%増から下方修正。耐久財出荷や個人消費支出の下振れなどを反映させた。4~6月期も0.7%増に引き下げた。一方、アトランタ連邦準備銀行が26日発表した1~3月期のGDP予想は4.7%増。24日時点の5.4%増から下方修正となった。

3月米雇用統計の予想は、失業率が6.1%で2月の6.2%から低下、非農業部門就業者数前月比は2月の37.9万人増加から50万人増加への改善が見込まれている。予想通りの結果となれば、株価を押し上げると同時に米10年債利回りの上昇予想も強まるため、ドル円は節目の110円を突破する展開になると予想する。

米景気回復期待の高まりからテーパリング(資産購入の段階的縮小)への思惑も出るだろうが、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長はじめFRBメンバーはいずれも早期のテーパリングや利上げを否定している。


パウエルFRB議長は23日、インフレ率の上昇が今後見込まれるものの、「大幅で継続的な上昇は想定していない」との見方を示した。新型コロナウイルス危機を受けた大型財政出動が、景気過熱を招く可能性を否定した。議長は、経済対策やワクチン普及により「景気回復は想定より速く、足取りは強くなりそうだ」との見通しを示し、インフレ率は年内に緩やかに上昇すると説明した。さらに「雇用と物価の目標に遠いことを考えると、現時点の極めて緩和的な金融政策は適切」と表明した。

FRBのブレイナード理事も、米景気をめぐる「不透明感の霧はまだ晴れていない」と述べ、忍耐強く金融緩和策を維持する必要性を強調した。ニューヨーク連邦準備銀行のウィリアムズ総裁は24日、米景気の先行きに関し、「今後数年間、かなり順調に回復していく」との見通しを改めて示した。ただ、完全回復には、かなりの時間が掛かるとも指摘。「インフレ圧力が高まるとはみていない」と強調し、市場の一部にあるインフレ懸念を否定した。

シカゴ地区連邦準備銀行のエバンズ総裁は25日、連邦準備制度理事会(FRB)が設定した利上げの条件は2024年まで達成されないとの見通しを示した。エバンズ総裁は、失業率は年内に4.5%に低下し「大きな進展が得られる」との見方を示しながらも、インフレ率は低すぎると指摘した。アトランタ連邦準備銀行のボスティック総裁は、今後予想されるインフレ率の上昇について「高進が迫っている兆候がはっきりしているとは思わない」と述べた「金融緩和策をなくす必要性を現時点で考えていない」と明言し、景気回復を支える緩和策の維持が適切だと語った。

ただ、タカ派的な見通しを持つメンバーもいる。米国は、一連のコロナ経済対策にGDPの3割近くを充てている。景気回復の足取りが強まる中、大型財政支出が景気過熱とインフレ加速を引き起こす恐れがあり、FRBが早期引き締めに動くとの観測もある。ダラス連邦準備銀行のカプラン総裁は、2022年に連邦準備制度理事会(FRB)が事実上のゼロ金利を解除するとの見方を示した。力強い景気回復を見込み、「FRBの中心的な見方よりも積極的な金融緩和策の縮小を予想している」と語った。


*CFTC建玉:3月23日時点のファンドのドル売り・円買いポジションは、5万3525枚(前週比+1万4157枚)。円買いポジションが5万枚を超えた。

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