【QEを振り返る】
28日から2日間に渡って、米連邦準備理事会(FRB)は金融政策を決める米連邦公開市場委員会(FOMC)を開催した。
今回のFOMCでは、2012年9月から続けてきた量的金融緩和の第3弾(QE3)を終了させる予定で、市場は政策金利の最初の引き上げ時期や引き上げペースに注目している。
ここで、一連の金融緩和政策を振り返って見よう。
そもそも、QE3とは、米国の連邦準備制度理事会(FRB)による実施が予測されている量的金融緩和政策の第3弾(「Quantitative Easing program 3」の略称)のことで、量的緩和の追加証券購入額は現在、月額250億ドル。
FOMCはこれを10月から100億ドル減らして150億ドル(約1兆6千億円)にする。9月18日のFOMCでは、「次回(10月)会合で現行の証券購入プログラムを停止する」とし、現在開かれているFOMCではQE3の終了が決定される予定。11月以降はFRBの資産拡大が止まる。
通常の金融緩和策は政策金利を引き下げる事で行われるが、QE(Quantitative Easing program)は市場に供給する資金量を増加させることで金融緩和を行う。景気が悪化状態にある時、一般的には金利を引き下げ策が用いられるが、すでにゼロ金利の状態にある場合は、金利引き下げにより市場に資金を流すことができないため、中央銀行が資産を買い入れて市場に資金を放出するという量的緩和策がとられる。
FRBは2007年9月に政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利を引き下げて金融緩和に動き出した。2008年のリーマン・ショックなどの金融危機に伴って景気が急速に悪化し、FF金利が実質ゼロとなったことで、次の政策として非伝統的とされる量的緩和(QE1)を開始したものの、その後も、米経済の改善が思わしくないため、第2弾(QE2)、第3弾(QE3)と量的緩和策を拡大してきた。
QE1は、2008年のサブプライム住宅ローン問題を受けたリーマンショックや世界同時株安といった金融危機が起こった際に、FRBによって2009年3月から2010年3月まで実施された。
QE2は、景気回復の促進とインフレ低下の阻止を目的として実施され、長期金利の押し下げを狙い、2010年11月から2011年6月までの約8ヶ月間に渡って、1ヶ月あたり約750億ドルのペースで合計6000億ドルの米国債の追加購入が行われた。
QE3は、労働市場(雇用)を刺激して景気を回復させるため、2012年9月に導入された。市場から住宅ローン担保証券(MBS)を追加的に買い取って、大量の資金を供給する事を目的として開始し、2013年12月まで続いた。
当時のFRBバーナンキ議長は、2013年5月22日の議会証言で、QE3の規模の縮小(テーパリングの実施)について言及した。中央銀行が量的緩和を行うペースを徐々に減らしていくことを「緩和逓減(テーパリング)」という。
同年6月19日の連邦公開市場委員会(FOMC)では、QE3の出口戦略(いつ、どのように終わらせるか)を明らかにした。2013年12月18日、米連邦準備制度理事会(FRB)は、2014年1月からQE3の規模を毎月850億ドルから750億ドルに縮小することを決定し、同年8月まで毎月100億ドルづつ縮小された。
2014年9月17日、QE3の規模を毎月250億ドルから150億ドルに縮小することを決定しQE3は10月で終了する予定となった。
FRBの2大目的は「安定した雇用」と「物価安定」と言われている。
雇用面では、2009年に一時10%まで悪化した失業率は2014年9月時点で5.9%まで低下し、長期見通しである5.2~5.5%に近づいてきた。非農業部門雇用者数も、安定した雇用回復の目安である毎月20万増のペースを維持している。物価面では、消費者物価指数(CPI)の上昇率を見ると、5月に前年比+2.1%にまで上昇したが、その後は低下を続け9月には+1.7%となり、インフレ率は低下傾向にある。それぞれ、現段階では懸念すべき事態にはなく、米景気が回復している状況では、これ以上の金融緩和は必要なしと判断したのだろう。
また、一段の資金供給が拡大し続けると、市中にあふれた資金が株式市場や不動産に流れ込み、バブル状態になる懸念も強まるため、それへの対策という意味合いもあるのだろう。
29日午後2時(日本時間30日午前3時)に政策決定に関する声明を発表する。イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長の記者会見はなく、当局者による新たな経済予測の公表もない。市場は、政策金利であるFF金利をいつ引き上げるのかに注目している。
今後の金融政策運営を示す「フォワードガイダンス」では、QE3終了後、現在のゼロ金利を「相当期間(considerable time)維持する」との文言を維持してきたが、今回のFOMCでも、これに変更はないだろうとの見方が優勢になっており、最初の利上げ予想に関しては、2015年前半から半ば、後半、2016年へと徐々に後倒しされている。
なお、イエレンFRB議長は就任後の最初の記者会見で「相当期間」について「半年程度」と発言したが、市場の懸念を強めたことから「機械的な解釈はない」と釈明した。フィッシャー副議長は「2カ月から1年程度」と幅を持たせ、市場の予想を困難にさせた。その後、FRBは「経済データ次第」と明言を避けている。