【2021年は穀物相場に注目】
2020年も終わりに近づいてきた。今年の商品市況で最も注目を集めたのは金相場だろう。NY金は2000ドルの大台を示現し、日本国内の金先物相場は7000円を超えた。
そしてあまり話題に上らなかったが、トウモロコシと大豆相場も大幅上昇を演じた。
10月、中国の米国からの大豆輸入量は340万トンと、2019年の3倍になった。これは米中の通商合意(2020年1月に「第1段階」合意)を受けたものであり、2020年の輸入量は4000万トンに達すると予測されている。
中国の大豆輸入量は経済が順調に発展し始めた1990年頃から急増した。
大豆を絞ると大豆油が得られると共に、その搾りかす(大豆ミール)が良質な家畜飼料になる。中国では経済発展に伴い豚肉と食用油の消費量が急増したが、それを供給するために大豆は欠かせない農産物となった。
大豆は中国でも生産されてはいるが、自国消費を賄うだけの収穫が得られないことから、他の穀物の生産を優先させて大豆は輸入に頼ることにした。
2018年に米国からの輸入量が減少しているが、ブラジルからの輸入量は急増し、輸入量が6600万トンになった。米国からは1700万トンに留まった。
これはトランプ大統領がハイテク技術の流出や知財権問題に関連して中国に強硬な態度を打ち出したことに対する報復措置だったと考えられる。
この動きに対して米国農家は怒りの矛先をトランプ大統領に向けた。大統領選を前にトランプ大統領は中国に大豆を購入するように働きかけた。

中国税関が12月7日に発表したデータによれば、中国が2020年1~11月に輸入した穀物は累計1億2920万2000トンに上り、前年同期比29.6%の大幅増となった。
背景には中国国内と海外の穀物価格の逆転がある。中国国内産の穀物価格は外国産に比べて小麦が1トン当たり333元(約5300円)、コメが同16元(約260円)、トウモロコシが同609元(約9700円)高いため、国内産が敬遠され安価な外国産を購入している。
中国では2018年8月から家畜伝染病のアフリカ豚コレラが流行し、養豚業界が大打撃を受けたが、感染は2019年にかけて徐々に落ち着き、今年は豚の飼養頭数が急回復している。
そのため、中国の養豚業の回復により飼料原料向けの需要が増加していることが背景にある。
中国政府は国内の穀物農家を保護するため、小麦、トウモロコシ、コメの輸入に割当制を採用している。そのうちトウモロコシの2020年の輸入枠は720万トン。この枠内なら輸入トウモロコシの輸入関税は1%にすぎないが、枠を超えた場合は最低65%の高関税が課される。
しかし、そのような状況下でも10月は、トウモロコシの輸入が初めてこの割当量を突破した。2020年1~10月のトウモロコシの累計輸入量は728万トンと、前年同期比97.3%増加。10月は単月で1年前の12倍の114万トンが輸入された。
外国産トウモロコシの主用途は養豚用の飼料の原料になる。
中国国内の穀物価格は今後も上昇傾向にあり、輸入拡大は持続すると予想されている。
思い起こせば1995~96年。ワールドウォッチ研究所のレスターブラウン氏が「誰が中国を養うのか」という著作を世に出し、1年間でトウモロコシ相場が2倍強に高騰した。
この時は米国中西部の天候悪化に加え、中国国内の輸送インフラの未整備が相場上昇の背景にあった。
来年の天候に感しては未知数であるが、中国の輸送設備は当時より拡大に進歩しているはずだが、それでも穀物不足が懸念されるという状況には十分注意せねばならないだろう。
旺盛な中国需要を背景に2021年の穀物相場は一段高の可能性がある。
さしあたり、来年3月までシカゴコーンは500セント、シカゴ大豆は1500セントがそれぞれ上値の目安になろう。
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